倒産でもお金が戻ったケース


 前回、当たり前のことですが、倒産したらお金は戻らないことを書きました。

原則そうだと思っていれば、万一のときも心の準備ができていて精神衛生上は好ましいのではないかと思います。

しかし、ペイオフ制度の対象となっていた日本振興銀行のケースで元本と利子が返って来たのは想定内だとして、元本保証ではなかったのに倒産してもお金が戻ってきた経験が実は2回あるので、それについて書いてみたいと思います。

まずは、軽いやつから。

中期国債ファンド

証券会社で買うことができた、いわゆる「中国(ちゅうこく)ファンド」という人気の金融商品がありました(ちなみに、中華人民共和国とは何の関係もありません)。

大和証券さんによると、中国ファンドとは、

「中期国債ファンド」の略称で、中期国債を中心に運用する追加型の公社債投資信託のこと。
基本的に、1円以上1円単位で購入でき、信託期間は無制限で、常時解約が可能です。分配金は、毎月の最終営業日に1カ月分(前月の最終営業日から当月の最終営業日の前日までの分)をまとめ、分配金に対する税金を差し引いたうえ、自動的に再投資されます。1980年から販売が認められ、運用会社が相次いで設定しましたが、後発のMMFと制度変更などで商品上に大きな違いがなくなったため、現在では取り扱う運用会社はわずかとなっています。

確率的には元本割れの可能性がかなり低い金融商品なのですが、法的に元本が保証されているわけではありません。

実際、9.11同時多発テロ事件の再保険を受けていた大成火災海上保険が倒産をして、同社が発行した無担保の約束手形(コマーシャル・ペーパー)を組み入れていた三洋投信の中国ファンドが元本割れをしたことがあります。

で、この中国ファンド、私は山一證券で購入していました。

そう、1997年11月24日に廃業した大手証券会社の山一證券です。

廃業直後の山一證券

同社の廃業が報道された後、確か有楽町駅辺りだったと思うのですが、その店舗に出向きました。

窓口で、元本と利子は満額支払われるが解約に関する手数料は引かれる、と説明を受けました(今、この記事を書くにあたってネットで調べると「中国ファンドの解約手数料はかからない」という記述しか見当たりませんでしたが、私の記憶では、当時は何かしらの手数料を取られたように思います)。

  • 私:「御社が廃業されたのが理由で解約になるのに、手数料が必要なのですか?」
  • 窓口の女性:「はい。そういう決まりです(きっぱり)」

当時の私はまだ若く、後ろを振り返ると、椅子に座りきれずに立っている大勢の大人が真剣な顔で待っていて、近くの中年男性は「小僧、とっとと帰えんな」とでも言わんばかりの難しい顔をしているし、入口のドア付近には物々しい格好をした警備員が何人も立っていて、取り付け騒ぎまではほど遠いにしても、一種異様な空気にたじろいで、すごすごと退散したことを覚えています(東京渡辺銀行の取り付け騒ぎ(1927年)や新円切替時の預金封鎖(1946年)はこの比ではなかったと思うと怖いですよね)。

経済的にはほぼ満額回答だったので特に不満はなく、修羅場ちょっと手前の現場に立ち会う経験もできたので、私にとっては悪い話ではなかったのですが。

(”ニューシティレジデンスの倒産と復活“に続きます)