海外株式の投資信託における実質コスト

先進国や新興国などの海外株式を日本国内で購入できる投資信託(インデックスファンド)について、以前から費用(実質コスト)の明細がイマイチよく分からなくて少しモヤモヤしていたのですが、たまたま目にした資料が分かりやすかったので、備忘録としてメモしておきます。

『運用報告書「1万口当たりの費用明細」の内容について』

2018年10月05日付の『運用報告書「1万口当たりの費用明細」の内容について』(楽天投信投資顧問株式会社)が元の資料です。全文はご自分で検索してみてください。

この資料が出された経緯をざくっと説明すると、楽天証券がバンガード社(低コストのETFを運用している世界的に有名な企業)と共同で開発した鳴り物入りの「楽天・バンガード・ファンド」シリーズの手数料が割高だという風評が立ったので、必ずしもそうではない旨を説明した資料という位置づけです。

楽天証券のプロが自己弁明(?)のために本気で作った資料なので、目的外利用(笑)となりますが、投資信託における実質コストを理解する上では良い資料かと。

投資信託の費用構成

元の資料から拝借しました。

以下、これらの項目についてコメントします。

直接お客様にご負担いただく費用

これは、投資家が投資信託を購入したり売却するなどのアクションをしたときに一時的に発生する費用に該当します。

購入時手数料

投資信託を購入するときに一時金として支払う販売手数料(ロード)のことですね。
今では販売手数料ゼロ円の「ノーロード・ファンド」が一般的だと思います。

信託財産留保額

投資信託を売却(解約)するときに一時金として支払う手数料のことですね。
「後のことはよろしくね。自分の都合で解約するので迷惑料として0.3%ぐらい残していくわ」という感じでしょうか。

この投資信託については費用は発生しません。

投資信託財産の中から、間接的にお客様にご負担いただく費用

運用管理費用(信託報酬)

これは、一般的によく目にする費用項目ですね。
投資信託の一覧を見るとこの項目だけしか掲載されていなかったりするので、これが費用のすべてだと誤解する人も多いかもしれません(実際には費用の一部にすぎません)。

ここでは、年0.1296%(税込)の内訳(委託会社・販売会社・受託会社)も明示されています。

ちなみに、この三者の関係はこんな感じです(出典は大和証券投資信託委託株式会社さん)。

「委託会社」は、投資信託を組成した○○投資信託委託みたいなプレーヤーですね。この投資信託の場合は楽天投信投資顧問株式会社です。

「販売会社」は、みなさんが実際に投資信託を購入するときに利用した企業になります。たとえばSBI証券とか○○銀行とか。

「受託会社」は、有価証券を分別保管してくれる会社で、○○信託銀行のような会社ですね。この投資信託の場合は、三井住友信託銀行で、さらにそこから日本トラスティ・サービス信託銀行に信託事務の一部をアウトソーシングしている感じでしょうか。

投資対象とする投資信託証券における報酬

これは、この投資信託(ベビーファンド)が購入する投資信託(マザーファンド)そのものの費用になります。

たとえば、「楽天・全世界株式インデックス・ファンド」のマザーファンドは米国市場で購入できる「VT」(バンガード・トータル・ワールド・ストックETF)で、「楽天・全米株式インデックス・ファンド」のそれは同じく「VTI」(バンガード・トータル・ストック・マーケットETF)です。

費用(経費率)も同じですね(VTは2019年02月27日に年0.10%から年0.09%に下げたので、この投資信託も同様に費用を下げた旨を2019年03月11日にニュースリリースしています)。

実質的に負担する運用管理費用

これは、上記の「運用管理費用(信託報酬)」と「投資対象とする投資信託証券における報酬」の合計額です。

ネットでは、この「実質的に負担する運用管理費用」を判断基準にすべきだという論調の記事が多いように思います(基本的に私も賛成です)。

その他費用・手数料

この投資信託に関する「租税、監査報酬、信託事務の処理に要する諸費用なども投資家が負担してくださいね」ということですよね。

まぁ、それはそうですよね。

で、この記事の冒頭に書いた「手数料が割高だという風評」被害についてですが、これは「売買委託手数料」を投資信託協会規則にもとづいて記載する必要があったので割高に見えた、ということのようです。

この売買委託手数料ですが、要するに、この投資信託を日本人のお客さんが購入した場合、その分だけ米国市場で「VT」や「VTI」などのETF(上場投資信託)を買い付ける必要があるので、そのための手数料(ETF売買の都度発生する売買仲介人に支払う手数料)に該当します。

おそらく、この売買委託手数料はこの「その他費用・手数料」に含まれているという理解でいいのではないかと思います。

そうすると、たとえば日本円を米ドルに換える費用もまたこの「その他費用・手数料」に含まれるということでしょうか。

そのほか、高給な人件費や企業の利益などを含め、色々とコストが上乗せされている感じですよね。資本主義なのでアタリマエですけど。

わざわざ「費用・手数料等の合計額は、保有期間や運用の状況などに応じて異なり、あらかじめ見積もることができないため表示することができません。」と尚書きしているのも少し気になります。

やはりETFの直接購入

結局のところ、海外株式の投資信託を日本で購入するのは、「みなさんのために米国ETFのVTやVTIを購入代行してあげるので手数料を上乗せさせてもらいますよ」という構図ですよね。

VTやVTIなどのマザーファンドに相当する部分の費用(経費率)は仕方ないとしても、自分でETFを直接購入すれば「運用管理費用(信託報酬)」は発生しませんし、「その他費用・手数料」に関しても、少なくとも「監査報酬」の全額や「信託事務の処理に要する諸費用」の一部はゼロ円です。

日本円を米ドルに換えるときの手数料と株式(ETF)の購入手数料についても、前者はFXを利用して「為替スプレッド0.5銭」(約0.005%)で済みますし、後者はSBI証券や楽天証券だと1取引あたり20米ドルが上限です。

なので、まとまった資金があれば、米国市場でVTやVTIを直接購入した方が費用を抑えられるので資産形成に有利かと。特に長期投資の場合は、こういった費用はボディブローのように効いてくるので。

投資信託からの米国ETFも

ちなみに、個人的には、投資信託の最大のメリットは低コストで少額から積み立てられるという点だと思っています。

購入する際の一時的な費用が(たとえば米国ETFと比べて)安く、自動継続にすれば手間もかからないしドルコスト平均法にもなる点が優れていますので。

なので、たとえば投資信託で「全世界株式インデックスファンド」を毎月10万円ずつ積み立てると2年後には240万円+αになっているので、それを売却(解約)し、米国市場で「VT」(バンガード・トータル・ワールド・ストックETF)を購入して老後まで長期保有する…という方法もアリだと思います(解約時に売却益(α)に課税されるのが欠点ですが)。