『ジム・ロジャーズ 世界的投資家の思考法』(ジム・ロジャーズ著)

ジム・ロジャーズはクォンタム・ファンドの共同設立者。

以下、個人的な備忘録。

投資家へのアドバイス

投資家として成功を収める唯一の方法は、自分自身がよく知っているものに投資をすることだ。

他人に依存したくなる心をなくすためには、投資についてさまざまな勉強をすることが大事。成功したいなら人の意見は聞くな。私(ジム・ロジャーズ)の意見だって聞いてはいけない。

世間一般で信じられている物事を疑わずに鵜呑みにするな。そして、自分で考えろ。大多数に従って成功した者はいない。周囲が馬鹿にしたら成功の兆候だ。

わからないときは何もせずにじっとしていることが大切だ。安いものをみつけ、変化があったら投資し、機が熟して上昇するまでじっと我慢して待つ。「何もしない」ことこそが投資家にとって、とても大事である。

分散投資をすれば損失の変動が抑えられるが、資産が大きくなるのに時間がかかるというデメリットもある。大金を手にしたいなら、知っているものに集中投資することだ。

災害や危機に関する記事を見たら投資を考えることだ。いい投資家になりたいなら「危機」を念頭に置いて欲しい。

日本

歴史を振り返れば、人口減少が続く国が衰退することは目に見えている。

年を重ねては打ち手がなくなる! なるべく早く日本人は海外に目を向けよ。

日本国内で円で資金を保有しているなら、なるべく早くその一部でも海外の投資商品に移すことだ。

新型コロナウイルスが落ち着けば観光産業の市場は世界的に拡大する。観光産業は日本にとって今後も長いスパンで成長が見込める数少ない分野だ。

米国

2019年10月末、米国の公的債務残高が初めて23兆ドルを超えた。これまでに積み上げてきた過剰な債務のツケはいつか誰かが払うことになる。

アメリカの巨額債務は「破裂寸前」。アメリカのような借金国よりもお金のある国と親しくするほうが賢明だ。今世紀の覇権国は中国だ。

※中国が経済大国であることを否定はしないが民主主義を抑圧する政治体制と仲良くするのは個人的には無理。僭越ながら、この点だけはジム・ロジャーズの考えに反対。

金地金と暗号通貨

「国債をいくらでも発行していい」と主張している「現代貨幣理論(MMT)」は難しい理屈を抜きにしてばかげている。長期的にはしっかりと裏付けされたお金がなければ、すべてが瓦解することは目に見えている。債券バルブは近い将来、破裂する。

ゴールドは無価値になることはない。危機時に圧倒的な強さを発揮する。

「仮想通貨」はいずれ無価値になる。

読後感

ジム・ロジャーズは「クォンタム・ファンドの共同設立者」という肩書きですが、実際にはジョージ・ソロスが弟子として抜擢。勤勉で情報収集力/分析力が高く重宝したが最終的な意思決定はすべてジョージ・ソロスが実施したという認識でした。投資家としての実績も、同じソロスの弟子であればクォンタム・ファンドの後継者に指名されたスタンレー・ドラッケンミラーの方がジム・ロジャーズよりも優れているのではないかと。

なので本書も余り期待していなかったのですが、実際に読んでみると書かれている内容は非常にマトモでした。

そう言えば、ジョージ・ソロスがジム・ロジャーズを雇うと言い出したとき、多くの同僚から「頭はいいが鼻持ちならない奴だから止めておけ」と反対されています。ソロス自身が変わった性格なのでジム・ロジャーズのそんな性格を別に気にしなかったようです。それを別にすると、ソロスも認めた頭の良さがあるわけですから、本書の内容もまた個人投資家によって役立つものだというのは驚くに値しませんよね。

本書は薄い本で1時間もあれば読めます。似た内容のジム・ロジャーズ本が他にも多数出版されている模様ですが、どれでも良いので1冊ぐらいは読んでおいても損はないと思います。

(了)