『Market Hack流 世界一わかりやすい米国式投資の技法』(広瀬隆雄著)

著者の広瀬隆雄氏は現在、米国フロリダ在住。米国株投資について広くSNSで情報を発信しています。

以下、個人的な備忘録。

Market Hack流 投資術10カ条

①営業キャッシュフローのよい会社を買え

営業キャッシュフローは誤魔化し難い。

営業キャッシュフローよりも純利益が大きいなら粉飾決算の可能性がある。

営業キャッシュフローが毎年増加している銘柄が良い。

営業キャッシュフローマージン(=営業キャッシュフロー÷売上高)は15%から35%が理想。

②保有銘柄の四半期決算のチェックを怠るな

最低でも保有銘柄の決算日は把握しておく。

EPSと売上高のコンセンサス予想を把握しておく。

良い決算とはEPS・売上高・ガイダンスが全てコンセンサス予想以上であること。

上場間もなく2回連続で決算をミスったIPO銘柄は売却すること。

③業績・株価の動きが荒々しい銘柄と、おとなしい銘柄をうまく使い分けろ

値動きの荒っぽい銘柄が好きな性格は株式投資には向かない。

ホームラン狙いではなくシングルヒット狙いの保守的な銘柄をポートフォリオに加えること。

著者(広瀬氏)が推す保守的な銘柄は(執筆した2013年時点では)下記の通り。

④分散投資を心がけろ

個人投資家だと10銘柄から16銘柄。分散効果があって、目が行き届く範囲。

銘柄は業種(セクター)を分散させること。

⑤投資スタイルをきちんと使い分けろ

投資資金の大部分をインデックスファンドに突っ込んでベータ(市場全体の動きから得られる利益)を取りにいき、残りの資金で代替資産へ投資してアルファ(投資家の腕前から得られる利益)を取りに行くスタイルが流行。

グロース投資で購入直後から利益が出ないなら直ぐに処分する(購入した銘柄やタイミングを間違った可能性が高い)。そもそも損切りの判断が遅い性格だとグロース投資に向かない。

バリュー投資は購入価格にシビアであるべき。貸借対照表や損益計算書を読みこなす能力が必要。皆が売っている時に買い向かうのだから、バリュー投資家には強い信念が必要。商売に対する鋭い嗅覚も必要。ビジネスの経験値がモノを言う。実社会でのビジネスの経験がないのにバリュー投資が極められると思うのは錯覚。

⑥長期投資と短期投資のルールを守れ

短期投資(トレーディング)では、ポジションを建てた直後から利が乗り始めなければ、やっていることの何かが間違っている。

短期投資を始めた理由が「チャートが良い」とか「モメンタムがある」なのに、株価が下がって「バリューがある」と思って買い増すのは首尾一貫していなくて危険。

長期投資できる良い会社とは「良い決算」を出し続ける会社。「良い投資ストーリー」は証券会社が演出した御伽噺。

⑦マクロ経済がわかれば、投資家としての洗練度が格段に上がる

ピーター・リンチは、マクロ経済の分析をする暇があれば個別銘柄を研究する主義。

ジョージ・ソロスは、グローバル・マクロ(マクロ経済の中に不均衡を見つける投資戦略)を重視する主義。「ゲームのルールが変わる瞬間をめがけてトレードを仕掛ける」(ジョージ・ソロス)。

⑧市場のセンチメントを軽視する奴は儲けの効率が悪い

「投資」の文字が躍るようになったら、買いの手を控えろ。「今回の相場は違う」という言葉にも要注意。

「もっと買っておけば良かった」と欲を出して買い増ししたり、「乗り遅れるな!」と焦って建てたポジションが、後で一番手痛い損失になる。

相場がよい時、投資家は不思議な「不死身」感に囚われ、危険に対して鈍感になる。

⑨安全の糊代をもて

安い仕込み値段だけが「安全の糊代(Margin of safety)」を持つ。

⑩謙虚であれ(投資の勉強に終わりはない)

投資の世界でイチコロに死ぬのは「最小限の努力で最大のリターンを」と横着なことを考える奴。

■その他

ネットスケープ

熱狂の最中では、優良会社を見分けるのは至難の業。倒産したネットスケープの上場当時、アマゾンやアップルよりも評判が良く、インターネット企業の中で一番毛並みのよい会社だと広く認められていた。

アセットアロケーション

アセットアロケーション(資産配分)が大事。分散投資によってリスクが低減する。

インデックスファンド

ロング・オンリーの運用は、

  • 無駄な売買を繰り返して手数料がかかる
  • 手数料の割高な金融商品に手を出す
  • 相場のタイミングを誤って、怖くなって安値で退場する

という失敗の可能性があるが、長期のインデックス投資はこの欠点を補うので悪くない。

しかし、インデックスファンドのバイアンドホールドが有効なのは「マーケットは長期に右肩上がり」という前提に基づく。世界的にベビーブーマー世代がリタイアし始めると株式資産の取り崩しが加速すると予想されるので、不確定要素も多い。

読後感

基本に忠実でオーソドックスな米国株式投資の指南書です。

本書を読み込んでおけば、著者のSNS上での発言をより正確に理解できるのではないかと。信者さんには特にお勧め。

(了)