イトーヨーカドーの社名(めうがや → 羊華堂 → 伊藤ヨーカ堂)

Buildings Night Urban Neon Sign  - Free-Photos / Pixabay

セブン&アイ・ホールディングス (3382)から季刊誌の株主通信である『四季報』が届きました(東洋経済さんの『会社四季報』ではありません)。

株主通信は届く数が多いので普段は開封もしないことが多いのですが、今回は株主関連の郵便物がラッシュで届く時期と少しズレたことと、セブン&アイは最近株主になったので開封して斜め読みをしてみました。

で、目にとまったのが「セブン&アイグループのあゆみ」。

1920年 吉川敏雄(伊藤雅俊名誉会長叔父)が台東区浅草に洋品店「羊華堂」(開店当初の店名「めうがや」)を開業

とあります。

なるほど、「ヨーカ堂」は「羊華堂」だったんですね。

「キッコーマン」が「亀甲萬」なのと同じです。

こういう雑学、好きです(笑)。

で、欄外の補足を読むと、

1920年(大正9年)に、東京・浅草の地に開かれた「足袋」を商う店が、現在のイトーヨーカ堂のルーツです。大正から昭和初期にかけてのこの時期、都市部を中心に日常生活スタイルが変化する中で、洋装の普及に合わせて、洋品店「洋華堂」(ママ)が誕生しました。

ん?

「洋華堂」?「羊華堂」?

明らかにタイポなんでしょうけど、1ページ前の名誉会長インタビュー記事に「羊華堂」とあるので、「洋華堂」が間違いなんでしょうね。

編集者さん、ひどく怒られそうで、ご愁傷様です(汗)。

編集者さんの肩を持つわけではないですが、中国表記だと「伊藤洋華堂」らしいので「洋」の字にしちゃったのかも。


で、ここで疑問が3つ。

(1)なぜ洋品店なのに「洋華堂」ではなくて「羊華堂」なのか?

(2)そもそも「めうがや」との関係は?

(3)どのタイミングで「イトーヨーカ堂」の「イトー」がつくのか?

で、ネットで調べてみました。

(1)なぜ「羊華堂」?

大正時代に銀座で繁盛していた洋品店「日華堂」から「華堂」を頂戴し、それに吉川氏の干支である「ひつじ(羊)」の字を加えて「羊華堂」としたようです。

(2)「めうがや」とは?

「めうがや」と書いて「みょうがや」と読み、万治2年(1659年)に日本橋で創業された老舗の足袋屋さんです(ちなみに屋号は家紋が茗荷だったことが由来のようです)。

長い歴史の中で多くの暖簾分けをしており、吉川氏の「めうがや」もその一つだったと思われます。

足袋屋から洋品店に業態を変えるときに暖簾分けされた「めうがや」の名前をそのまま使うことは出来ないので、上述のように「羊華堂」としたのではないかと推測します(ただし伊藤名誉会長が「当初の数年間は『めうがや洋品店』だった」旨を述べています)。

(3)「イトー」がつくのは?

もちろん、イトーヨーカドーの「イトー」は伊藤名誉会長の「イトー」なのですが、上述の同会長のインタビュー記事では

戦後、私は母や兄とともに東京・千住の地で「羊華堂」を再開しました。その後、私はスーパーストア「イトーヨーカ堂」を興し

とあるので、

  • めうがや:足袋屋さん
  • 羊華堂:洋品店
  • イトーヨーカ堂:スーパーマーケット

という感じでしょうか。

実際には、伊藤譲氏(伊藤名誉会長の兄)が暖簾分けを受けてしばらく後の1948年に「合資会社羊華堂」を設立、譲氏死去のあとに伊藤名誉会長が跡をついで「株式会社ヨーカ堂」(1958年)を設立し、欧米流通業の視察から帰国後にスーパーマーケット業にシフトして「株式会社伊藤ヨーカ堂」(1965年)に改称しています。

ちなみに、知り合いから「子供の頃、同じ商店街にイトーヨーカ堂とヨーカ堂の2つがあった」という話を聞いたことがあるのですが、どうやら後者については、吉川氏の羊華堂もかなり繁盛していて幾つかの洋品店が「ヨーカ堂」として暖簾分けをしているので、そのうちの1つだったのではないかと思います。

登録商標について

で、少し気になって「ヨーカ堂」の登録商標を調べたところ、

  • 「ヨーカ堂」(1964年03月12日出願)

となっていました(現在の権利者は株式会社イトーヨーカ堂。以下同じ)。

あまり商標に詳しくないのですが、文字としてデザイン性が高いので、これで、「ヨーカ堂」を名乗っている他の店に対して「登録商標なので止めてください」って言う権利(禁止権)が発生したのでしょうか?

同時に、

  • 「yokado」(1964年03月12日出願)

も出願しています。

これも普通のローマ字ではなくて、デザイン性がありますよね。

下種の勘繰りですけど、今でいう標準文字みたいな感じではなくてロゴ商標っぽいので、「ヨーカ堂」という登録商標の諸権利(とくに禁止権)が強くなかったのではないかと(スミマセン、あまり自信はありません。苦笑)

実際、「株式会社ヨーカ堂」の設立は1958年なので、その段階で商標出願をしても良かったわけですし。

で、「イトーヨーカ堂」の商標に関しては、

  • 「イトーヨーカ堂」(1965年07月06日出願)

となっていて、これは社名変更(ヨーカ堂→伊藤ヨーカ堂)と同じタイミングです(しかもデザイン性が弱まって標準文字に近い。笑)。

なので、「イトー」がつくのは1965年に「株式会社伊藤ヨーカ堂」に改称したタイミングで、その理由は(伊藤名誉会長のインタビュー記事の行間を読めば)従来の洋品店からスーパーマーケットへ業態変更をしたためだと思われるのですが、初代(叔父)から暖簾分けした幾つかの「ヨーカ堂」との差異化という理由もあったのではないかと推測する次第です。


以上、セブン&アイ・ホールディングスの季刊誌『四季報』を読んでの雑感メモでした。