ETF-JDRと米国での源泉徴収について

以前、米国リートETF(1590)の収益分配金領収証(15円)の話を書きました。
配当金の一部が非課税になることが判明して、三菱UFJ信託銀行が米国歳入庁から17円を還付してもらい、そこから国内の税金を引かれて15円が私に戻ってきたという話です。

これを契機として、自分の勉強を兼ねてETF-JDRについて調べたので備忘録として書き留めておきます。

ETF-JDRとは

そもそも、米国リートETF(1590)は”ETF-JDR”という分類であって、厳密には”ETF”とは異なるんですね。

ETF-JDRとは、三菱UFJ信託銀行さんによると、

外国に上場するETFを信託財産として日本国内で発行される、受益証券発行信託の受益証券です。
国内の証券取引所に上場されます。
JDR(上場信託)は「Japanese Depositary Receipt」の略称であり、ADR(米国預託証券)等と類似したスキームであることから、「日本版預託証券」とも言われます。

図表もお借りしました。

米国リートETF(1590)の場合、米国のETFである”iShares US Real Estate ETF”(IYR)を日本国内の金融機関(ブラックロック)が米国で保有し、それを三菱UFJ信託銀行が担保として預かって受益証券(つまり米国リートETFの株式相当)を発行している、という感じでしょうか。

ETF-JDRへの課税

税金については苦手なのですが、とりあえず私の不足がちな知識をネットの情報で補いながら書いてみます(不正確な点も多々あると思うので、みなさんは必要なら税務署か税理士さんに相談してください)。

そもそも、米国においては配当金も譲渡益(売却益)も同率の30%が源泉徴収されます。

源泉徴収というのは、国家が税金を取り逸れないように、たとえばA社がBさんにお金を支払うときに天引きしておいて、それをA社がBさんの代わりに国家に納めるという仕組みです(国家としてはA社のほうが信頼できるという前提)。

Bさんとしては税金を前払いしているのと同じなので、後から適切な申告をすれば、払い過ぎた税金を還付してもらうことができます。

なので、米国人が配当金と譲渡益の30%を源泉徴収されても、場合によっては節税をして還付してもらうことが可能だったりします、多分。

では、日本人(米国の非居住者)はどうかというと、一番大きな枠組みとして日米租税条約が適用されます。

この条約によって、日本国内に居住する日本人が米国企業から受け取る配当金については、米国の歳入庁にフォームW-8BENを提出していれば、10%に軽減された源泉徴収で済みます。

カブドットコム証券さんの図表をお借りすると、基本は米国で30%の源泉税率で、日本国内の税金と合わせて二重課税となり、結局、配当金の55.78%しか手もとに残りません。

軽減税率が適用された場合は米国で10%の源泉税率で済みますが、やはり日本国内の税金からは逃れられません(NISAなどを除く)。それでも71.72%が手もとに残る計算です。

ちなみに、譲渡益については米国での課税はありません。非居住者の米国源泉徴収は0%です(もちろん日本国内では課税されます)。

この軽減税率について、松井証券さんのニュースリリースによると、

米国籍の外国ETFを信託財産とするJDR(有価証券信託受益証券)の受託者である三菱UFJ信託銀行が、2015年9月25日以降を権利確定日とする分配金または配当金について、米国での源泉税徴収時に日米租税条約に基づく軽減税率を適用するサービスを開始します。

どうやら、三菱UFJ信託銀行が、配当金10%の軽減税率を適用するサービスを2015年9月25日から始めていたみたいです。
フォームW-8BEN相当のものを歳入庁に提出してくれるという感じでしょうか。

その後、私の利用しているSBI証券と楽天証券からも同様の連絡がありました。

ETF-JDRの廃止

ところで、ブラックロックが、iシェアーズETF-JDRの下記10銘柄を2018年01月22日付で上場廃止としました。

  • 米国ハイイールド債券ETF-JDR(iBoxxドル建てLHYC)(1361)
  • 新興国債券ETF-JDR(自国通貨建)(1362)
  • 米国債ETF-JDR(米7-10年国債)(1363)
  • 先進国株ETF-JDR(MSCIコクサイ)(1581)
  • エマージング株ETF-JDR(MSCIエマージングIMI)(1582)
  • フロンティア株ETF-JDR(MSCIフロンティア100)(1583)
  • 米国超大型株ETF-JDR(S&P100)(1587)
  • 米国小型株ETF-JDR(ラッセル2000)(1588)
  • 米国高配当株ETF-JDR(モーニングスター配当フォーカス)(1589)
  • 米国リート・不動産株ETF-JDR(ダウ・ジョーンズ米国不動産)(1590)

この理由について、同社は

このたびブラックロック・グループは、日本におけるETFの商品戦略をより効果的なものとするため、その日本法人であるブラックロック・ジャパン株式会社より、幅広い投資家層が投資しやすい内国ETF形態のiシェアーズETFを通じ、各種資産クラスへの投資手段をご提供することといたしました。これを受けて、日本での提供商品を見直す一環として、本ETF-JDRは信託を終了することといたしました。今後は、内国ETF形態のiシェアーズETFが代わって投資家の皆様の分散投資ツールの役割を担います。

上場廃止の判断理由として、配当金の30%源泉税率問題があったのかどうか分かりません。

でも、株主一人ひとりが三菱UFJ信託銀行に軽減税率の適用依頼をするというのは手間がかかりますよね。
知らなかった人や忘れていた人だと配当金の20%が米国で余分に取られちゃうので。

内国ETFだと、軽減税率の適用依頼は必要ないようです。

で、新しい内国ETF形態のiシェアーズETFは下記のとおりです。

  • S&P500米国株ETF(1655)
  • MSCI先進国株(除く日本)ETF(1657)
  • MSCI新興国株ETF(1658)
  • 米国債7-10年ETF(1656)
  • 米国債7-10年ETF(為替ヘッジあり)(1482)
  • 米ドル建て投資適格社債ETF(為替ヘッジあり)(1496)
  • 米ドル建てハイイールド社債ETF(為替ヘッジあり)(1497)
  • 米国リートETF(1659)

新旧を比較してみるとほぼ同じ内容で看板を架け替えたものが幾つかあります(まったく同一条件というわけではありませんが)。

  • 米国債ETF-JDR(米7-10年国債)(1363)→(1656)
  • 先進国株ETF-JDR(MSCIコクサイ)(1581)→(1657)
  • エマージング株ETF-JDR(1582)→(1658)
  • 米国リート・不動産株ETF-JDR(1590)→(1659)

下記については、超大型株で構成されるS&P100から大型株のS&P500に変更になっています。

  • 米国超大型株ETF-JDR(S&P100)(1587)→S&P500米国株ETF(1655)

下記についてはニーズがイマイチだったのか、理由は不明ですが、今のところ後続のETFが見当たりません。

  • 米国ハイイールド債券ETF-JDR(iBoxxドル建てLHYC)(1361)
  • 新興国債券ETF-JDR(自国通貨建)(1362)
  • フロンティア株ETF-JDR(MSCIフロンティア100)(1583)
  • 米国小型株ETF-JDR(ラッセル2000)(1588)
  • 米国高配当株ETF-JDR(モーニングスター配当フォーカス)(1589)

そういえば、私もフロンティア株ETF-JDR(1583)を持っていて、出来高が低いために売却するときに苦労したことを思い出しました。

以上、ETF-JDRと米国での源泉徴収について調べたことの備忘録でした。