著名な米国株インフルエンサー(広瀬隆雄氏)の過去記事を検証

米国株のインフルエンサーとしてご活躍中の広瀬隆雄氏がダイヤモンド社のWEBサイト上で『世界投資へのパスポート』というコラムを執筆しています。新着記事のみならず過去記事も勉強のため拝読しているのですが、その中で「この株を買っておけば儲かってたの?」という素朴な疑問が浮かびました。

そこで、下記に該当する銘柄について検証をおこなったので備忘録として残しておきます。

  • 2012年03月27日から2013年12月30日までの『世界投資へのパスポート』記事
  • 具体的なティッカーシンボルが記載
  • 現在(2021年02月17日)も同一ティッカーシンボルで存在
  • 否定的なコメントが多い銘柄は除外

なお、途中で売却せずに現在(2021年02月17日)まで保有し続けたものとして計算しています。

結論

まず結論を先に述べておきます。

同一ウェイト

記事の中で言及された銘柄を同じ重み付け(金額)で単純に購入した場合、

  • 広瀬氏:3.308倍(評価益+230.8%)

になりました。軽く3バガーですね。

同じタイミングでS&P500を同額購入していたとすると、

  • S&P500:2.938倍(評価益+193.8%)

となっています。これも中々の数字です。ここで両者を比較すると、

  • 3.308倍÷2.938倍=1.1259

なので、

  • 広瀬氏がS&P500を12.6%アウトパフォーム

という結論になりした。

推奨度による重み付け

記事を読んで以下のルールで購入額の重み付けをしました。もちろん「推奨度」は読み手側の受け取り方に依存します(またご本人には推奨の意図はないのかもしれません)。あくまで個人の感想です。

  • 2倍:明確に購入を推奨。
  • 1倍:どちらかといえば肯定的な印象。
  • 0.5倍:単に言及したのみ。または肯定と否定が同じ程度。

記事の中で言及された銘柄を上記の重み付けによって購入した場合、

  • 広瀬氏:4.014倍(評価益301.4%)

になりました。先ほどよりも数値は大きくなっています。

同じタイミングでS&P500を同額購入していたとすると、

  • S&P500:2.935倍(評価益+193.5%)

となります。先ほどとほぼ同じ値です(同一指標なので当然ですが)。ここで両者を比較すると、

  • 4.014倍÷2.935倍=1.3676

なので、

  • 広瀬氏がS&P500を36.8%アウトパフォーム

という結論になります。凄いですね。

手順

計算の元となるデータについて幾つかの例を挙げて説明します。

2012年08月20日:アップル(AAPL)

記事が日本で公開された直後の米国市場の終値を「取得単価」としました。購入手数料は含まれていません。また配当金や株式分割を考慮した「調整後終値」を採用しています。

  • 購入価格(2012年08月20日):$20.55

同様に2021年02月17日の終値を現在価格としています。

  • 現在価格(2021年02月17日):$130.84

で、単純に計算をすると、

  • 倍率:$130.84÷$20.55=6.367倍
  • 評価損益:6.367-1=+536.7%

となります。

また、比較対象のS&P500については配当金を考慮したS&P500トータルリターンの値を利用しています。購入時と現在の株価は上記と同じ手順で取得しました。

そうすると、S&P500については、

  • 購入価格(2012年05月21日):$2,278.24
  • 現在価格(2021年02月17日):$8,137.88

なので、

  • 倍率:8,137.88÷2,278.24=3.572倍
  • 評価損益:3.572-1=+257.2%

という次第です。

なお、重み付けについては、具体的に記事の中で

ある企業の株価は、過去最高値をつけるとそこから新しい買い手が現れるケースが多いので、ごく短期的にはアップルにも引き続き強気のスタンスを維持すべきだと思います。

今現在は、新iPhoneへの期待がすべての悪材料を覆い隠している状態ですが、9月12日ごろにiPhone5が発表された後は、これらの懸念がにわかに表に出てくるものと思われます。

という記述から肯定的な意見と否定的な意見が拮抗すると判断して「0.5倍」としました。

ご参考までに、アップル(AAPL)とS&P500(こちらはトータルリターンではなく通常のS&P500)のチャートはこんな感じです(米国Yahoo!から拝借。以下同様)。

2013年11月18日:シノプシス(SNPS)

記事が公開された直後の「調整後終値」と直近の終値は下記のとおりです。

  • 購入価格(2013年11月18日):$36.35
  • 現在価格(2021年02月17日):$283.76

で、計算をすると、

  • 倍率:$283.76÷$36.35=7.806倍
  • 評価損益:7.806-1=+680.6%

となります。

S&P500(トータルリターン)については、

  • 購入価格(2013年11月18日):$3,205.46
  • 現在価格(2021年02月17日):$8,137.88

なので、

  • 倍率:$8,137.88÷$3,205.46=2.539倍
  • 評価損益:2.539-1=+153.9%

という次第です。

なお、重み付けについては、

シノプシスに投資しておけば「モノのインターネット」の波に乗り遅れることはないのです。

シノプシスは半導体回路設計ソフトの分野で最大の企業で、技術的にも最先端を走っています。

ハイテク企業の中では収益はかなり安定している部類に入ります。

という記述から強い推奨の「2倍」としました。

ご参考までに、チャートはこんな感じです(青色はケイデンス・デザイン・システムズ(CDNS)で単にコメントされただけなので重み付けは「0.5倍」)。

計算データ

同一ウェイト

各銘柄を同じウェイトで購入した場合は下記のとおりです。

繰り返しになりますが、

  • 広瀬氏:3.308倍(評価益+230.8%)
  • S&P500:2.938倍(評価益+193.8%)

  • 広瀬氏がS&P500を12.6%アウトパフォーム

となります。

推奨度による重み付け

各銘柄に重み付けをして購入した場合は下記のとおりです。

これも繰り返しになりますが、

  • 広瀬氏:4.014倍(評価益301.4%)
  • S&P500:2.935倍(評価益+193.5%)

  • 広瀬氏がS&P500を36.8%アウトパフォーム

となりますよね。

備考

広瀬氏が言及した後に上場廃止となった銘柄が2つあります。

1つはカジノ経営のメルコ・クラウン(MPEL)でコンプラ遵守を嫌気した自主申請による上場廃止でした。同社は日本進出も検討するなど現在も健在です。

もう1つは半導体設計のメンター・グラフィックス(MENT)で独シーメンス社にTOBされています。

このような例は存在しますが途中で倒産した銘柄は見当たらなかったので銘柄の「生存者バイアス」には該当しないと思われます。

チャート

数字のミスをしていないかダブルチェックするために各銘柄(緑色その他)とS&P500(赤色)のチャートをスナップショットしておいたのでご参考までに。

なお、チャートはいずれも配当金を考慮していません。なので購入時よりも現在のほうが株価が下がって見える場合でも実際は(配当金をプラスしたトータルリターンは)プラスになっていることがあります。そういう意味ではチャートよりも上記の図表の方が正確です。

●2012年05月21日:フェイスブック(FB)/2012年06月25日:フェイスブック(FB)

●2012年07月02日:ヨーロッパETF(VGK)


●2012年08月20日:アップル(AAPL)


●2012年09月18日:ゴールドETF(GLD)


●2012年10月29日:アマゾン(AMZN)


●2013年01月07日:スリーディー・システムズ(DDD)/ストラタシス(SSYS)

※3Dプリンタ。

●2013年01月15日:オーストラリアETF(EWA)/BHPビリトン(BHP)

●2013年02月04日:フリーポート・マクモラン(FCX)/アルコア(AA)/ヴァーレ(VALE)/ペトロブラス(PBR)/アルセロールミタル(MT)

※コモディティ関連株(鉱山会社)。

●2013年02月12日:バレロ・エナジー(VLO)

※石油精製。

●2013年03月04日:フロンティアETF(FM)


●2013年04月01日:ロッキード・マーチン(LMT)

※防衛産業。

●2013年04月01日:ゼネラル・ダイナミクス(GD)

※防衛産業。

●2013年04月15日:マイクロソフト(MSFT)


●2013年04月15日:インテル(INTC)

●2013年07月22日:エクソン・モービル(XOM)


●2013年08月05日:イタリアETF(EWI)/スペインETF(EWP)


●2013年09月17日:パイオニア・ナチュラル・リソーシズ(PXD)/EOGリソーシズ(EOG)/サウスウエスタン・エナジー(SWN)

※シェールガス。

●2013年09月24日:ラスベガス・サンズ(LVS)/ウィン・リゾーツ(WYNN)/インターナショナル・ゲーム・テクノロジー(IGT)

※カジノ。

●2013年11月05日:ツイッター(TWTR)


●2013年11月18日:シノプシス(SNPS)/ケイデンス・デザイン・システムズ(CDNS)

※IoT(モノのインターネット))。

●2013年12月02日:アマゾン(AMZN)/アップル(AAPL)


●2013年12月09日:ユナイテッド・ステイツ・スチール(X)

(了)