『ピーター・リンチの株で勝つ(新版)』(ピーター・リンチ著)

著者のピーター・リンチは伝説の「マゼラン・ファンド」運用マネジャー。

以下、個人用の備忘録。

銘柄の分類(カテゴリ)

基本的に個別銘柄は下記の6カテゴリに属する。それぞれに特性がある。まず分類すること。

低成長株

鉄道、自動車、電力などの銘柄。以前は急成長株であったが成長が鈍化した。大きくて古い株は、通常、GNPより少し大きい成長しかできない。株価の成長が見込めない代わりに配当は高い。

ローリスク・ローリターン。損することは少ないがあまり儲からない。

購入判断のポイントは「配当金」。配当性向も重要。

株価が30%から50%上昇すれば売る。ファンダメンタルズが悪化した場合も売却。配当利回りが下落しても売る。

※著者(リンチ)のファンドは基本的に組み入れなかった。

優良株

コカコーラ、ブリストルマイヤーズ、P&Gなどが代表銘柄。巨大企業で身軽ではないが、低成長株よりは成長が早い。年率10%から12%程度が目安。不況に強いので市場が悪いときには頼もしい。

ローリスク・ミドルリターン。

購入判断のポイントは「株価収益率(PER)」。

将来の収益減につながる誤った多角化は危険(売却)。PERが大きく上昇したときも売却。

※著者(リンチ)のファンドには組み入れられていた。

資産株

現金や不動産を保有する企業。

資産の価値を正確に見極められるなら、ローリスク・ハイリターン。

購入判断のポイントは「何が含み資産でどれだけの価値があるか?」。

乗っ取り屋の登場を待つ。

市況関連株(景気循環株・景気敏感株・シクリカル株)

自動車、航空、鉄鋼、化学など。

市況の見通しによって、ローリスク・ハイリターンからハイリスク・ローリターンまで。

購入判断のポイントは「景気・在庫・市況など」。

利益のピークは景気循環の最終期だが、サイクルの終了以前に株価が下落することも少なくない。何かが狂い始めたときに売却するのが良い(在庫・市況・競争激化など)。

急成長株

急成長株は急成長産業の中にあるとは限らない(たとえばアンハイザーブッシュやマリオットなど)。タコベル、ウォルマートやGAPも同様。

ハイリスク・ハイリターン。

購入判断のポイントは「どの分野でどの程度まで今のスピードで成長し続けられるか?」。

著者(リンチ)は、成長率が年20%から25%が好ましいと考えている(停滞している産業であれば尚良し)。年25%だと警戒レベル。年50%だと失速して株価急落の可能性がある。機関投資家の持ち株比率が小さく、アナリストの関心が低いなら有望(逆ならマイナス要因)。

減益になるとPERが下がり、投資家が急成長株に許容してきたPER上限も下がるので、ダブルで株価は下がる。アナリスト40人が強い買い推奨を出したり、経済誌が揃って特集を組むときは、売り時。

※著者(リンチ)は10バガーになりそうな積極性のある小企業が好み。

業績回復株

倒産寸前から立ち直った株。クライスラーなど。

ハイリスク・ハイリターン

購入判断のポイントは「改革に熱心であるか?計画は十分に実行可能か?」。債権者からの攻勢に耐えられないとダメ。現金および負債のチェックは重要。

業績が転換したところで売却。もはや業績回復株ではない(別カテゴリに分類されるべき)。

投資したい銘柄

面白みの無い社名・馬鹿げた社名

仕事内容が連想できる単純な社名が良い。

変わり映えのしない業容

単純な仕事内容が良い。

※愚直な仕事内容が社名に表われている企業はダブルで良い。

感心しない業種

思わず肩をすくめたり、顔をそむけたりしたくなる業界が良い。

たとえば、油で汚れた自動車部品の洗浄機をガソリンステーションに提供しているセイフティ・クリーン(回収した廃油は精製所にリサイクル)。プラスチックナイフやフォークのエンバイロダイン社。

分離独立した会社

大企業は、独立させた部門が失敗することで評判に傷がつくことを恐れる。

機関投資家が保有していない会社、アナリストがフォローしていない会社

機関投資家が保有していない会社は穴。アナリストがフォローしていない会社は大穴。
かつては人気だったがプロから見捨てられた会社でも良い(クライスラーやエクソン等)。

悪い噂の出ている会社

廃棄物処理産業やカジノ業界はマフィアとの関係が連想されるので良い。
ウェイスト・マネジメントやカジノ株の株価は急上昇した(後者はホリテイインとヒルトンが市場参入したため)。

気の滅入る会社

たとえば葬儀屋(SCI)。

無成長産業

多くの投資家は成長産業の会社に投資したがるが、著者(リンチ)は違う。
まず、葬儀屋のような無成長産業の会社を探す。見つからなければ、プラスチックナイフやフォークのような低成長産業の会社に投資する。そのような業界から大化け株が出てくる。

急成長産業で成功すると、必ず頭のいいライバルが新規参入して更に優れた製品やサービスを提供する。なので急成長産業の会社の株価は下がる傾向にある。

※著者(リンチ)が推薦する企業は高い参入障壁で守られていてレッドオーシャンになりにくい業種ということ。

ニッチ産業

たとえば砂利の採石場。単価は安いが輸送コストが大きいので遠くから運ぶとペイしない。よって地域独占が成立する。独占的な地位を確保すれば価格決定権を握ることができる。

バフェットは繊維会社(バークシャー・ハザウェイ)を買ったが独占的な商売でなく当時の日本からの輸出に勝てなかいことに気付き、ワシントンポスト誌などの独占的なメディアに注目して成功した。1970年代の早い時期にマスメディア(ケーブルTVを含む)に注目した投資家は、ウォール街がそれらに注目したときには10倍の儲けを手にできた。
医薬品ブランドやコカコーラ、マルボロといったブランドは独占的である。

買い続けねばならない商品

医薬品、ソフトドリンク、剃刀、タバコのような安定したビジネスが良い。

テクノロジーを使う側であること

価格競争に悪戦苦闘する会社よりも、それを享受できる会社の株が良い。
たとえば、PC製造会社よりもオートマチック・データ・プロセッシング、バーコード読み取り装置の製造会社よりもスーパーマーケット。

インサイダーたちが買う株

自社株買いをする従業員が多い会社。経営陣が多くの自社株を保有している会社(エージェンシー問題が小さい)。

企業による自社株買い

ジレットは、新製品の開発・新規事業の立ち上げ・他企業の買収を実施したがイマイチだった(競争優位性の高い剃刀事業を逆に希薄化させた)。増配でもいいが、自社株買いによって株主還元をしていれば今頃の株価は数倍になっていただろう(失敗例)。

投資を避けたい銘柄

超人気産業のなかの超人気企業

ニュースを賑わし、誰もが通勤途上でも耳にし、つい周囲に押されて買ってしまうような株は避けたい。人気化した株は急騰するが、夢を買っているだけなので、落ちるときも急である。

急成長産業と人気企業は頭の良い人々が新規参入する。起業家とベンチャーキャピタルは、いかに早く参入するか日夜知恵を絞っている。

※つまり、その先にはレッドオーシャンしかない。

1960年代にはゼロックスは最高の人気株だった。アナリストは持て囃した。しかし日本企業やIBMやイーストマンコダックが参入した。業界そのものは成長したが過当競争で高収益をあげたプレーヤーは居なかった。

第二の○○

「第二のマクドナルド」や「第二のインテル」と呼ばれる銘柄は避けたい。そういうときは本家(第一の○○)も危ないことが多い。

多角化企業

高収益企業は増配の代わりに馬鹿げた企業買収をすることがある。こういう間違った多角化をする会社は避ける。

耳打ち株

「すごい株がある。ファンドに組み入れるには小型すぎるが個人で買うには向いている」という類の銘柄は壮大なストーリーが付いてくるが、大半は眉唾モノである。

このような大穴株の場合、新規上場時に買わないと手遅れだと思い込みがちだが、それは正しくない。マゼランファンドでは、アップル株のIPO割当を受けて初日に+20%で売却した。その後、株価は低迷し、マゼランファンドは業績回復するまで買わなかった。

IPO銘柄

著者(リンチ)が買ったIPO銘柄は、4つのうち3つは長期的に見ると失望する株であった。

ただし、IPO銘柄のうちでも他社から独立した銘柄や、当初から業績が安定した銘柄は上手くいくことが多い(既に軌道に乗っている銘柄は業績を調べることができる)。

下請け会社

製品の25%以上を単一の顧客に売っている下請け企業は安定性に欠けるので避けるべき。

名前の良い会社

業績が良いのに名前がつまらない会社は注目を集めないので早くから買われることはない(良い企業でも割安で残っている)。
逆に、業績が悪いのに名前が良い会社は、投資家に誤った安心感を与える(悪い企業なのに割高になっている)。

収益、収益そして収益

強気相場における信じがたい楽天主義は、急成長株のPERを夢の国の水準に押し上げ、低成長株のPERを急成長株並みに押し上げる。そして、市場全体のPERも大きくなっている。

※良い会社であっても株価収益率(PER)が高すぎる場合は割高。会社そのものの本質的価値と株価は乖離する。

基本的な考え方

現金化というのは株式市場から降りるということである。状況に応じて銘柄の入れ替えはおこなうが、常に株式市場にとどまることが著者(リンチ)の考え方。

ポートフォリオとしては、各カテゴリの銘柄を組み合わせる。たとえば、急成長株4銘柄、業績回復株4銘柄、安定株2銘柄。

売買

評価益のある株を売却し、評価損のある株を保有することは、咲いている花をむしり取って雑損に水を与えているようなもの。上手くいかない。
また、機械的に、評価益のある株を保有し、評価損のある株を売却することも、あまり上手くいくとは思えない。
どちらの戦略も、現実の株価の動きと、ファンダメンタルズの価値を結びつけているから(会社の本質的価値に関係なく、株価は一人歩きをする)。

個々の銘柄のストーリーを考えて売買するのが正解。仮に期待を超えて40%上昇したとして、更に素晴らしい出来事が期待できるなら保持し、そうでなければ売却する。

たとえば「株価が25%下がれば押し目買いする」という決心ができず、逆に「株価が25%下がれば売却する」という致命的に誤った考え方では株式相場で利益を得られない。ストップロス(例えば10%下落したら自動的に売却)は正しくない。損失を確定することになる。

※銘柄を購入したときのストーリがまだ有効か否かだけが、その銘柄を売却するか否かの判断基準。

その他

購入タイミング

良い価格のしっかりした商品だと判断したときに買うのが絶好のタイミング(高級デパートのショッピングと同じ)。

バーゲン時期は2つ。1つは、10月から12月の節税の時期(評価損が大きい銘柄)。もう1つは、数年に1回の株価調整(下落)の時期。

売却タイミング

著者(リンチ)は、早く売却して儲け損なった経験も多い。その苦い経験に即して言えば、銘柄を売り急ぎそうになったら、銘柄を購入したときの初めの理由を思い出すこと(ストーリがまだ有効なら保持する)。

「金利が上昇する前に売れ」とか「次の不況の前に売れ」は正しいアドバイスが、それがいつ起きるかは分からない。

オプション取引、先物、空売り

著者(リンチ)は勧めない。
専門のトレーダーでもない限り、オプション取引で勝つのは困難。
先物や空売りも同様。

用語(定義)

  • 調整(10%下落)は2年に1回
  • 弱気相場(20%下落)は6年に1回
  • 暴落(30%下落)は12年に1回

インデックスファンド

株式相場を見る暇の無い人や、資金が少なくて多くの銘柄を買いたくても買えない人はインデックスファンドを買うべき。

読後感

言うまでも無く、著者(リンチ)は初心者の王道である「インデックスファンドの長期保有」については肯定的ですが、さらに一歩進めて個別銘柄を売買したい個人投資家に対して適切なアドバイスをしています。

本人の運用スタイルは「急成長株」または「業績回復株」をターゲットにしたテンバカー株狙いがメインで、そのノウハウについて詳細に説明しています。さらに、本人の好き嫌いとは別に、個別銘柄を6カテゴリに分類してそれぞれの特徴と売買タイミングについて網羅的な解説もしていて、大変に勉強になりました。

(了)