『ミネルヴィニの成長株投資法』(マーク・ミネルヴィニ著)

著者のマーク・ミネルヴィニは中学中退にもかかわらず1997年のUSインベスティング・チャンピオンシップで優勝した伝説の現役トレーダー。前年1996年は途中まで独走していましたが主催者が競技会そのものを中止したので優勝できませんでした(主催者の広告記事にSECが疑義を持ったため)。ちなみに、競技会は現在も元スタンフォード教授のノーマン・ザデー博士(ファジィ論理の生みの親であるロトフィ・ザデー教授の息子)によって運営されています(参加費を払えば個人でも海外から参加可能の模様)。

以下、個人的な備忘録です。

損切りと利益確定

損切り

株価が28ドルから14ドルに50%下げたら損益ゼロに戻すには100%上げる必要がある。10%の損失であれば11%の利益で済む。だから損失を膨らませてはいけない。損失が大きくなるほど取り戻すのは難しい。遅くとも損失10%のラインで損切りをすべき。

著者(ミネルヴィニ)は自分の過去の取引を振り返り、(損失を取り戻してプラスで手仕舞いした銘柄も含めて)全ての取引を損失10%ラインで損切りしたと仮定して再計算をした。その結果、利益は大きく改善した。

大きな損失からポートフォリオを守る方法は1つしかない。損失が雪だるま式に増える前に、まだ損失が小さいうちに損切りすること。

暴落はすべて、小さな調整から始まる。10%の下落が50%の暴落の始まりかどうかは、事後的に、取り返しがつかなくなってしまうまで分からない。

利益確定(利確)

たとえば、20ドルで買った銘柄が27ドルまで上がったとする。ここで利益の7ドルはどうせ儲けたお金なのでリスクを取って勝負できると考える投資家は間違っている。一度得た利益は自分の財産である。かなりの含み益を損失で終わらせてはいけない。

利確ポイントは2つある。1つは、損切りラインを-10%に設定しているのなら、その3倍に相当する+30%で利益確保のために売却する方法。もう1つは、損切りラインを損益分岐点まで引き上げる方法(利益ゼロで手仕舞い)。

株価サイクル(チャート分析)

株価サイクルは以下の4つのステージから成り立っている。

  • 第1ステージ:底固め局面(無関心)
  • 第2ステージ:上昇局面(機関投資家の買い集め)
  • 第3ステージ:天井圏(機関投資家の売り抜け)
  • 第4ステージ:下落局面(投売り)
第1ステージ

第1ステージでは魅力的な銘柄であっても購入していはいけない。動き出すまでに時間を要するので、その間は「死に金」になってしまう。

第2ステージ

第2ステージ(上昇局面)で購入すべき。
見分けるポイントは下記のとおり(トレンドテンプレート)。全て満たすこと。

  • 現在の株価 > 50日移動平均線 > 150日移動平均線 > 200日移動平均線
  • 現在の株価 > 52週安値×130%
  • 現在の株価 > 52週高値×75%
  • 200日移動平均線は最低でも1か月以上の上昇トレンドにある。
  • レラティブストレングスが70以上。

さらにファンダメンタル分析を実施して、購入候補を選定する。

急成長株は基本的に若い小型株に多い。PERを気にする必要はない。

第3ステージ

第3ステージで売却する。
特徴は、ボラティリティが大きくなる、出来高を伴なって大きく下落する、
200日移動平均線は失速して横ばいになる、など。

読後感

ミネルヴィニの投資法は、テクニカル分析(チャート分析)を使って成長株の候補を見つけ、伝統的なファンダメンタル分析で絞込み、購入後の売却タイミングにはテクニカル分析を再度利用するという感じでしょうか。

正直なところ、テクニカル分析には少し胡散臭さがありますが、ファンダメンタル分析を挟み込んでいる点で最終的なクオリティが高くなる点は納得です。

『マーケットの魔術師(株式編)』でジャック・シュワッガーのインタビューを受けた時、ミネルヴィニは「損切りの重要性」について延々と話したのでシュワッガーが録音を中断して「損切りは決まり文句で、成功した投資家は誰もが話す話題だ」と苦言を呈し、それに対して「それほど損切りは重要なんですよ」と切り返した逸話が本書に書かれています。

本書においても「損切り」の重要性と具体的な方法が書かれており、読みどころの1つとなっています(特に12章)。損切りと利益確定の話は大変参考になりました。

(了)