何人かの知人から「投資でお金を増やしたい。でも投資の勉強をする時間がない。しかも他人にお任せは怖い」という趣旨の相談を受けたことがあります。
そのときに答えた内容を元に整理して、必要最小限の一夜漬けの勉強で及第点(とりあえず60点ぐらい?)を取る方法をまとめたのでメモしておきます。
大前提となる投資戦略
まず、投資する場合の基本となる「何を・どのタイミングで・どれだけ買うか」という戦略についてポイントをおさらいしておきます(詳しくは「初心者のための投資入門」をご参照ください)。
- 投資に値する資産は「株式・不動産・債券」。一般には株式が無難
- 暴落時に投げ売りで安くなったタイミングで買う
- 株価が暴落しても耐えられるだけの現金を用意しておく
なお、買った資産はできるだけ長く保有し、どうしてもお金が必要になったときに初めて現金化するようにしましょう。
以下、株式に投資するという前提で、買うタイミングと現金保有率は個人によって状況が違うので特に言及せず、話を進めたいと思います。
極論すると、どの銘柄を買ってもほぼ同じ
株価とは、株式市場の参加者が真剣に考えて購入や売却をおこない、その需給バランスの結果として決まるものです。
誤解を恐れずに言いますが、プロの投資家であっても株価の予想は困難です。その証拠に、業績不振で解散したファンドは幾らでもあります。
つまり(バブルで参加者が浮かれて過ぎていたり、逆にクラッシュで参加者がビビって悲観的になり過ぎている場合を除いて)株価はその企業の価値をそれなりに正しく反映していると考えられます。
なので、ぶっちゃけ、株式を買う時点で「買って正解」や「買って失敗」という銘柄はありません。
株式を買った後に価格が変動し、事後的に「正解だった」とか「失敗だった」となるだけです。
株式投資で失敗を避けるには
株式投資で失敗を避けるためにじゅうようなのは、上述したとおり戦略レベルでの「買うタイミング」と「現金保有率」です。
それに次ぐのは、戦術レベルで重要な「分散投資」と「手数料」の2つになります。
卵は一つのカゴに盛るな
これは基本ですよね。
卵を一つのカゴに盛ると、そのカゴを落とした場合には、全部の卵が割れてしまうかもしれないが、複数のカゴに分けて卵を盛っておけば、そのうちの一つのカゴを落としカゴの卵が割れて駄目になったとしても、他のカゴの卵は影響を受けずにすむということ。
特定の商品だけに投資をするのではなく、複数の商品に投資を行い、リスクを分散させた方がよいという教え(=銘柄分散投資)。
(野村證券)
手数料は安いほど正義。特にランニング費用に注意
株式を購入または売却をすると、その時のワンタイムで売買手数料が発生します。店舗を構えている証券会社よりもSBI証券や楽天証券などのネット証券が低コストで売買可能です。
また、以前は口座管理料がランニング費用として発生していましたが、今では大手の野村證券でさえ口座管理料は無料になっています。
一方、投資信託には3種類の費用が存在します。
投資信託を購入するときに発生する「買付手数料」は数%が相場ですが、無料のノーロードの商品もあるのでそれを選ぶことになります。
売却するときは0.数%程度の信託財産留保額が発生しますが、これも無料に越したことはありません。
投資信託で一番問題なのはランニングで発生する信託報酬です。たとえばこれが年1%だとすると、100万円を10年間預けると10万円になります。かなりのダメージですよね。
もし損失を出しても納得できるものに投資する
要するに、株式に投資をする限りでは、なるべく分散投資をして手数料が安ければ大きな失敗はしないということですね。
もちろん投資なので結果論として損失が出ることもあります。
そんな時でも「自分がこう判断して投資したのだから仕方ない」と納得できれば精神衛生上は楽だと思います。
そういう観点からは「こうなると思う」という考えを明確にして、そのテーマに沿って株式を買うのがいいのではないでしょうか。
日本は今後も経済発展を続ける…と思うなら
日本の株式を買いましょう。
資金のすべてを1銘柄だけに投資すると万一倒産したときに金銭的にも精神的にもダメージが大きくなります。なので、できるだけ多くの銘柄に分散するのが基本ですね。
個別銘柄を保有するメリットは、
- ランニングの手数料(管理費)が発生しない
- 株主優待をもらえることがある
なのですが、投資できる金額が数百万円程度だと十分な数の個別銘柄を購入できません。
なので、いわゆるインデックス指数の投資信託を買うのが無難です。
日本株式の代表的なインデックス指数には日経平均株価(日経225)とTOPIX(東証株価指数)の2つがあります。玄人さん受けするのはTOPIXですが、ニュースとかでよく目にするのは日経平均株価ですよね。
正直なところ、どっちを選ぶかは小さな問題だと思うので、どちらでもいいかと。
現時点(2018年07月)で、ある程度の純資産があって手数料が安い投資信託はこんな感じでしょうか。
- ニッセイTOPIXインデックスファンド(信託報酬:年0.17172%)
- eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)(信託報酬:年0.17172%以内)
- eMAXIS Slim 国内株式(日経平均)(信託報酬:年0.17172%以内)
※同じ三菱UFJ国際でも「Slim」が付いていない「eMAXIS」は信託報酬が高い一昔前の商品なので気をつけてください。
日本では今後も大都市に人が集まってくる…と思うなら
不動産を買いましょう。
とは言っても現物の不動産を買うのは難しいので、リート(不動産投資信託)を買うことになります。
リートそのものは株式の個別銘柄とほぼ同じ扱いで個別銘柄を買うことができるのですが、現時点で60銘柄あるので、これも数百万円の資金では十分な分散は少し難しいかもしれません(株式よりは容易ですが)。
なので、いわゆる東証REIT指数の投資信託を買うのが無難ですよね。
- ニッセイJリートインデックスファンド(信託報酬:年0.27%以内)
- たわらノーロード 国内リート(信託報酬:年0.27%)
※「Smart-i Jリートインデックス」は信託報酬が年0.1836%と優れていますが純資産が小さいので少し不安ですね。今後もし純資産が増えればイチオシで。
やはり世界の経済は米国を中心に動いている…と思うなら
米国の株式を買いましょう。
米国株式のインデックス指数には伝統的なダウ平均株価のほか、S&P500やUSトータルマーケットなどがあります。ダウ平均株価は構成銘柄数が少ないのでちょっと難ありですが、S&P500とUSトータルマーケットなら大きな違いはないでしょう。
- 全米株式インデックス・ファンド (愛称:楽天・バンガード・ファンド(全米株式)) (信託報酬:年0.1696%程度)
※「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は信託報酬が年0.1728%以内と悪くないのですが純資産が小さいので少し不安ですね。純資産が増えれば選択肢の一つとして。
これからは人工知能の世界がやってくる…と思うなら
米国の人工知能銘柄としては、いわるゆ「FANG」(フェイスブック・アマゾン・ネットフリックス・グーグル)やそれから派生した「FAAMG」(フェイスブック・アマゾン・アップル・マイクロソフト・グーグル)が有名ですね。
これらは銘柄数も限られているので、数十万円ぐらいの資金があれば、SBI証券や楽天証券に口座を開いて米国市場で個別銘柄を直接購入できます。今ではネット証券でも特定口座を開設できるので以前に比べて確定申告も格段に楽になりました。
そこまでの資金がないなら、投資信託を買うしかないのですが、試しに名称に「AI」がつく投資信託を検索したら初期費用(買付手数料)が数%程度、信託報酬は年2%前後とお話になりません。
確実に手数料の分だけ負けるってことですから、どちらかと言えば「初めから負ける商品」「買ってはいけない商品」の類ですよね。
前述の「バンガード・ファンド(全米株式)」は米国のほぼ全ての銘柄を含んでいるので、FAAMGなどの人工知能銘柄も当然に含まれています。おそらくウェイトとしては10%近くあるのではないでしょうか(詳しく調べていないので適当ですが)。
なので、ここは不本意ながら、手数料の安い「バンガード・ファンド(全米株式)」で我慢するのも選択肢の一つかもしれません。
米国は当然だが欧州なども捨てがたい…と思うなら
日本を除く先進国の株式を買いましょう。
MSCIコクサイという代表的な指数があり、日本を除いた主要な先進国の株式に広く投資することができます。
- eMAXIS Slim 先進国株式インデックス(信託報酬:0.109%)
- ニッセイ外国株式インデックスファンド(信託報酬:0.109%)
これからは新興国(発展途上国)が台頭してくる…と思うなら
新興国(エマージング・マーケット)の株式を買いましょう。
代表的な指数であるMSCIエマージング・マーケット・インデックスに連動する投資信託を購入することができます。
- eMAXIS Slim 新興国株式インデックス(信託報酬:0.20412%)
- ニッセイ新興国株式インデックスファンド(信託報酬:0.20412%)
これから円安になる…と思うなら
外貨預金はスプレッド(売買の価格差)が大き過ぎるのでダメな商品の典型ですね。
それなら、FXでレバレッジを1倍に抑えて金利相当分のスワップポイントをもらう方が優れています。
もう少し利子が欲しいなら、米国の国債や社債などのETF(上場投資信託)を米国市場で買うという方法もあります。
ちなみに、色々あって、私は「VGLT」(米国長期国債ETF)を保有しています。
なお、円安対策としてある程度のリスクも許容できるなら、米国株を買うのもアリでしょう。
国内で「為替ヘッジなし」の投資信託(ETFを含む)を買えば、理論上は米ドル建ての資産を保有していることになります。もちろん、米国市場において米ドルでETFを購入しても大丈夫かと。
とりあえず様子見をしたい…と思うなら
1年以上の様子見をするなら、「変動10年」個人向け国債を買いましょう。とりあえず金利も付きます。
様子見が1年未満の可能性があるなら、ペイオフの上限1千万円で銀行口座に預けておくのがいいと思います。
日本が沈没する、共産主義国家に侵略される、ハイパーインフレに襲われる、預金封鎖や資産課税が実施される…と不安なら
金(ゴールド)の現物を買って貸金庫などの安全な場所に隠しておきましょう。
人類史上最強のお金(共同幻想)は「金」です。
ちなみに、私は田中貴金属で購入していますが、その他、三菱マテリアルや徳力本店などのロンドン地金市場協会(LBMA)が認定した公認溶解業者で購入するのが安心かと。
まとめ
まず、投資の対象は「株式」が無難です。
本来は株価が暴落して安くなったタイミングで買うのがベストですが、そこまで待てないなら株価が暴落しても耐えられるだけの現金を用意しておくのがいいかと。
分散投資をすることと手数料を抑えることの2つも大切です。
どの株式を買うかについては、どの銘柄が上がるのか下がるのかはプロでも分からないので、考えすぎないのが省エネでいいかもしれません。
精神衛生上の折り合いを考えるなら、「今後こうなると思う」というテーマに沿って株式を買えば、もし損失を出しても納得できるのではないかと思います(それでも納得できない性格なら投資に向いていないかも)。