先に見たように、PERおよびリスクプレミアムから判断すると、どちらも日経平均の株価は安いということになりました。
これらから、単純に「日経平均の株価は安い」と結論付けていいのでしょうか。
気をつけたいのは、リスクプレミアムの計算式の中で、現時点の値では、支配項は「益利回り」である、という点です。
つまり、リスクプレミアム8.9%のうちで、益利回り7.79%の影響が大きいということです。
「益利回り」はPERの逆数です。
したがって、確かに、リスクプレミアムはその計算式に名目GDP成長率とリスクフリーレート(長期金利)をパラメータとしているので、PERよりも精緻なものだと思います。
ただし、「PERが低い → 益利回りが高い → 益利回りは(現時点では)リスクプレミアムの支配項 → リスクプレミアムが高い」というロジックにより、同一根拠(PER)によって「株価は安い」と言っているように思います。
ところで、PERは計算が単純で便利なのですが、そこで用いられる純利益は一般に「1年間の予想利益」が用いられます。
つまり、たまたま瞬間風速で単年度の決算がプラスに予想されると、その影響をモロに受けてPERの値およびリスクプレミアムの値が良く見えるということにります。
CAPEレシオ
このようなPERの問題を解決するため、「1年間の予想利益」ではなく「過去10年間の平均利益にインフレを考慮した値」を使ってPERを計算する方法が考え出されました。
これが「CAPEレシオ」です。
10年間の平均値を使っているのは、景気循環による利益の変動をなるべく小さく抑えてその会社が持つ本質的な稼ぐ力をみようという視点からです。
CAPEレシオの”CA”は”Cyclically Adjusted”の略で、文字どおり「景気循環を調整した後の」という意味になります。
つまり、CAPEレシオは「景気循環を調整した後のPEレシオ(PER)」ということです。
なお、考案者の名前をとって「シラーPER」と呼ばれることもありますが、同じものです。
で、CAPEレシオの妥当な数字は幾つなのでしょうか。
これは、PERと違って、みなさんが同じことを言っています。
ところで、
国内株式のCAPEレシオ29.54倍(2017年12月31日)
※出典はそれぞれcuffelinks.com.auとSiblisResearch.com
つまり、CAPEレシオから判断すると、日米ともに株価はかなり高いということになります。
PERおよびリスクプレミアムとは逆の結果になりました。
なぜでしょう?
私なりに理由を考えれば、国内株式に関していえば、アベノミクスによる景気回復によって、過去10年間の平均的な純利益に比べてこの1年間の瞬間風速的な予想利益の方が2倍程度大きい(したがってPERは小さくなりリスクプレミアムは大きくなる)ということだと思います。
(続きます)