倒産したらお金は戻らない

先日、定期預金をしていた日本振興銀行が経営破綻したときの話を書きましたが、同じ経営破綻つながりの話を。

取引先企業の倒産

以前、会社を経営していたとき、取引先の企業が経営破綻しました。
いわゆる倒産ですね。

東北地方の地場企業だったのですが、創業者である父親の引退にともなって二代目が跡を継いでいました。
誠実な人柄で好感を持てる人だったのですが、後から聞いた話では、古参の番頭さんが独立して競合会社を設立してから経営が悪化したようです。

会社が倒産すると弁護士が破産管財人になって、債権債務などの後片付けがおこなわれます。

私のところにも破産管財人から破産手続開始通知書が突然送られて来て、「債権があるなら届け出て欲しい」「債権者集会があるので○○地方裁判所まで来て欲しい」という内容が書かれていました。

初めてのことなので事情がよく分からず、百万円近い未回収金(債権)があったので、顧問の弁護士先生と税理士先生に相談をすると異口同音に「多分1円も戻らない。債権届だけ出して放置がいい。債権者集会に行っても費用の無駄」とのこと。

その後、破産管財人だか地方裁判所からだか何か連絡が来たように記憶していますが、結局、お金は戻ってきませんでした。

ただ、経理担当者から「その書類は大事にしてくださいよー、貸倒損失の損金計上に大切なので」と言われ、当時の実効税率が約4割だったため、「だね、実際の被害は6掛けで済むわけだし」と納得せざるを得なかったことを覚えています。

個人事業主の自己破産

同じく、私が事業をしていたときのこと。

通販事業をしていた個人事業主のAさんが取り込み詐欺に遭いました。
大量の注文を受けて商品を送ったのですが、相手は商品を持ったまま消えてしまって代金をもらえない、というやつですね。

このAさんに商品を提供していた企業B社がありました。
B社にAさんを紹介した口銭(売買の仲介手数料)として、B社がAさんに販売した金額の一定割合を私の会社がB社から継続的に受け取っていたのですが、そのB社から折り入って話があると連絡がありました。

会って話を聞くと、詐欺の被害後も当初はAさんからB社に少しずつ分割で支払いがあったのですが、あるときAさんの弁護士から自己破産の通知が来て万事休す。それ以上の回収が不能になりました。ついては、B社が私の会社に支払った(詐欺被害分の相当する)口銭を戻してもらえないか、と。

私の会社とB社との契約では口銭を戻す義務はないのですが、そこは義理人情浪花節が大事なビジネスの世界なので「御社も大変ですよね」と二つ返事で返金をお約束しました。

それにしても、このB社は1千万円を超える損失です。
もちろん、大手企業なので与信管理もちゃんとしていたと思うのですが、相手に自己破産(いわば個人の倒産ですよね)されるとお手上げです。

お金は戻ってきません。

倒産すると株式はただの紙切れ

これらから学ぶことは、相手が倒産するとお金は戻ってこない、という当たり前の事実ですね。

株式投資を例にすると、株式会社が倒産すると最初に税金、次に従業員に支払われるべき給料、そして借金の順番で回収されていきます。

もしそれでも会社に残余財産があれば、それらは株主に分配されます。
ただし、残余財産があるぐらいならそもそも倒産にはならないわけで、基本的には株券はただの紙切れになると思ったほうがいいでしょう。

いや、倒産した南満州鉄道(満鉄)やパンアメリカン航空(パンナム)の株券は部屋に飾っても絵になるのでネットオークションで数千円の値段がついたりもしますが、今は電子化されているので紙切れにもなりません(苦笑)。

保有していたリーマンブラザーズ社が倒産した話は他の記事でも触れましたが、もし同社が株券を発行していれば、自戒の念を込めて書斎に飾っておきたいところです(三方ヶ原の戦いで武田信玄に惨敗して命からがら浜松城に逃げ帰ったときの自画像を描かせて戒めとした徳川家康の気持ちでしょうか。同列に語るのは畏れ多いのですが)。

私が過去に保有していた株式で、そのまま倒産してしまった銘柄は10社近いと思います。

気がついたらどーんと株価が下がっていて、ニュースで調べたらいつの間にか会社更生手続きを申請していて、上場廃止になってしまうと敗戦処理が色々と面倒臭そうなので今のうちに1円でもいいからさっさと売却、みたいな感じです。

中には、害虫予防駆除を専門とする株式会社キャッツ(9786)のように、粉飾決算によって上場廃止(2004年3月24日)になった銘柄も保有していました。
確か、その直前には経済専門誌が優良企業として取り上げており、粉飾を見抜けなかった反省の記事を上場廃止後に掲載していたように思います(記憶違いなら申し訳ありません。雑誌名は伏せておきます)。

危ないところを何とか逃げ切ったことも1回だけあり、福井県の優良な地場企業であった江守商事(9963)が中国事業にのめり込んでいて危ないだか何だかの経済記事を読み、すでに株価は下がっていたものの早めに損切りをしたので傷が浅くて済みました。
創業百年を超える名門企業で、株主優待で地元の銘酒「黒龍」をいただいたこともあり、大変に残念です。

株式を買ったお金の大半は、気長に待つと仲間を連れて戻って来てくれるのですが、倒産という地雷を踏むと二度と戻って来てはくれません。

個別の銘柄に株式投資をしたときの怖いところです。