個人投資家がプロに勝つために

最初にお断りをしておくと、この記事は憶測で書いている部分があって正確でなく、知識不足のために網羅性に欠けているかもしれません。なので、いわば草稿だと思って、これらの点を割り引いて読んでいただければ幸いです。

さて、個人投資家が運用成績でプロ(機関投資家やアクティブファンドのマネージャを漠然と想定)に勝つことはできるのでしょうか。

ビギナーズラックで勝ったとか、個人投資家100人のうち何人かはプロに勝ったとか、そういう個別の話ではなくて、期待値としてプロのパフォーマンスを上回ることが可能なのか、について考えてみたいと思います。

基本的に、プロが圧倒的に有利

プロは、質が高く、量も豊富で、しかも鮮度(入手スピード)のいい情報を得ることができます。そして、それらの情報を分析するための知識や経験は格段に優れているだろうし、ツール類も揃っていれば、チームで補完することも可能でしょう。

本業であるため、投下できる稼動量も十分にあります。

また、運用資金も桁違いに多いので、売買のために必要な単位あたりの手数料はほぼ無視できます。

唯一、プロに不利な点があるとすれば、それは自分たちの高額な報酬が費用として発生することでしょうか。これについても、運用資金が十分にあれば全体における割合は極めて小さくなると考えられますが。

個人投資家に有利な制度を活用する

極端な話ですが、素人がプロレスラーと戦ってハンディキャップなしで勝つのは至難の業ですよね(というか、戦う前から戦意喪失してしまいます)。何かしらのハンディをもらえてしかるべきでしょうし、幸いにも投資においてはそのような制度が設計されています。

というわけで、まず、個人投資家が有利な制度を見てみましょう。

個人向け国債

通常の国債は、満期まで保有していれば元本割れはありませんが、途中で売却すると(金利の上昇面であれば)損失が発生します。それに対して「個人向け国債」は、途中で換金をしても元本割れはありません。

法人は購入することができず、個人のみが購入できる商品です。

現状、マイナス金利の日本においては、国債や社債などを含めたローリスク商品と比べてもコスパに優れたノーリスク商品なので、リスクを取りたくない資金ならこれ一択ではないでしょうか。
私も必要な生活資金の大半は「個人向け国債(変動10年)」に置いています。

NISA(ニーサ)

NISAの非課税口座を利用すると、配当や売却益に対する税金がかかりません(非課税)。
この制度を利用しないと利益の2割強を真水で持っていかれるので、ダメージは大きいですよね。

たとえば、100万円を期待収益率5%で10年間投資するとして、年に1回全額をリバランスする(税金を支払う)場合、普通は10年後に148万円(=100*1.04^10)なのですが、税金を免除されてその分を再投資できると162.9万円(=100*1.05^10)になる計算です。

この差の約15万円は大きいですよね。100万円で15万円の差は、1,000万円なら150万円の差になります。

iDeCo(イデコ)

これもNISAと似たような制度です。
配当や売却益に対する税金が非課税になります。

NISAに比べて年間投資額の上限が低いとか、60歳まで引き出せないとかの制約はありますが、掛金の全額が所得控除(非課税)となる利点は大きいと思います。ネットの情報を見てみると、個人の状況によるものの、NISAよりもiDeCoを勧めるケースが圧倒的に多いですね。

ちなみに、早期退職をした後、私は付加年金(月額400円の掛金)に加入して上限(月額68,000円)までの残り(千円単位なので月額67,000円)でiDeCoに加入しています。

株主優待制度

株主優待制度を設けている企業が多くあります(これって日本に独特の制度のようですね。そもそも株主優待制度を意味する英単語が存在しないようなので)。

なぜ株主優待制度を実施しているのか、企業の側から見ると、大きく2つの理由があります(安楽亭に関する国税不服審判でもこれらが論点になっています)。

たとえば飲食券やホテル宿泊券の場合、株主にサービスを利用してもらって口コミによる広告を期待したり、株主から意見をフィードバックしてもらったり、広い意味でのIR活動であるとの位置づけです。

また、株主優待により個人投資家の歓心を買って株主になってもらい、議決権を行使せず、したがって経営陣に優しい個人株主を確保したいという一面も考えられます(あるいは上場維持に必要な基準を満たすとか)。

そのため、株主が保有する株式数にかかわりなく(つまり株式数に比例することなく)名義ごとの株主優待であったり、保有する株式数に応じて増加するものの比例はしなかったり、上限で打ち切られたり、いずれにしても機関投資家よりも個人投資家に優しい制度になっています。

個人投資家に有利な場所と時間で戦う

制度として設計されていなくても、個人投資家に有利な空間や時間があるかもしれません。

小型株

小型株とは時価総額(株価×発行済株数)が小さい銘柄で、定義としては東証一部の銘柄のうち上位400社以外の銘柄のことですが、ざくっといえば、時価総額が数百億円以下のイメージでいいと思います。

一般に、小型株は大型株よりもパフォーマンスが高い傾向があります(小型株アノマリーとして知られています)。

機関投資家は運用資産額が大きいので、たとえば時価総額が百億円の企業の株を五億円買おうとすると需給バランスが崩れて株価は上昇するので、買いたくても買えません。つまり、機関投資家は体が大きいがゆえに、小型株の市場では、いわば自分で自分の首を絞めることになりますね。

なので、小型株は機関投資家の主戦場ではなく、まだ少しはブルーオーシャン(競合相手が少ない領域)なのではないか、と。

その他、小型株アノマリーについては、小型株は知名度が低くて知られていない(買い手が少ない)からとか、倒産リスクが高いのでリスクプレミアムが高めに乗っているとか、割安であることの説明があるようです。

いずれにしても、小型株に限らず、機関投資家と正面から戦うことのない場所を選ぶという戦い方は有効なのではないでしょうか。

万一に備えて現金比率を高めておく

米国では機関投資家の現金比率は過去10年の平均で4.5%だと言われています(出典:バンカメ・メリルリンチ)。

しかし、バフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイの現金比率は、現時点では15.45%で上記の平均の3倍超です。

最近話題となったレイ・ダリオ氏の個人投資家向け推奨ポートフォリオ(オールシーズンズ戦略)では、現金(正確には中長期の米国債)の比率は55%になっています。

米バンガードの創業者であるジャック・ボーグル氏は、自分の個人的なポートフォリオで、米国の株式と債券を同じ割合で保有していると伝えられています(出典:ブルームバーグ)。

個人投資家のことを考えてみると、いうまでもなく自分のお金なので、外野から何のプレッシャーを受けることがなく、自分の思いどおりにアセットアロケーションが可能です。たとえば、現金比率を80%に高めても誰も文句はいわないでしょう。

株式市場がクラッシュしてバーゲンセール価格で株式を安く買える場面に備えて十分な軍資金を用意しておくという考え方は、個人投資家には(本人がそう決めさえすれば)簡単でも、機関投資家やフルインベストメントでの資産運用を求められているファンドマネージャには難しいのではないでしょうか。

そういう意味では、現金比率を高めておいて、好況期ではなくて不況期に戦う――つまり、戦う時間をシフトさせる、というのは有効な方法かもしれません。

ちなみに、現金で保有しておくと、インフレ率の分だけ目減りをしてしまいます。リスクフリーな商品(たとえば国債など)を購入しても、リスクプレミアムを得られないので機会損失が発生します。

なので、本来はリスクとリターンを考慮して現金を遊ばせないようにすべきですが、現在の日本のようなマイナス金利であれば、かなり乱暴な話ですが(今のところは日本国内に限っては)「現金≒債券」として考えてもいいのではないか、と思います。

個人投資家に不利なことをしない

個人投資家にとって不利なことは、なるべく避けることが賢明でしょう。

個別銘柄の情報に乗せられない

たとえば何かの情報で個別銘柄を買おうとすれば、インサイダー情報でもない限り、その情報はすでに手垢にまみれた古い情報の可能性が高く、したがって慌てて買ってもババを掴まされる可能性が高いと思います。

直近の例では、2017年後半から2018年初頭にかけてのビットコインのような感じでしょうか。情報の鮮度が高い数年前に買っていれば大儲けできた一方、ピーク時に買ってしまった場合はダメージが大きくなりました。

そういう意味で、情報の質や鮮度あるいは分析能力で機関投資家と戦っては駄目なのではないかと。

ただし、大きなトレンドについては、全体の動きがゆっくりしているので、その情報に乗ってみるのは悪いとは限りません。

経営学ではPEST(Politics・Economy・Society・Technology)というフレームを使うことが多いのですが、たとえば、電力自由化、マイナンバー、カジノ、働き方改革などの政治的な動向、人口オーナスやゆとり世代のような社会的な動向、あるいは再生医療や人工知能などの技術的な動向といった大きな単位(トレンド)であれば、自分の頭でゆっくり正しく咀嚼しながら、個別銘柄を物色するのも面白いかもしれません(機関投資家は巨艦であるがゆえに進路を急に変えられないので、個人投資家にも参加する余地があると思われるので)。

無駄な費用を払わない

たとえば頻繁に売買を繰り返すとそれなりの手数料になります。

極端な話、投資資金がめちゃくちゃ豊富であれば、自分で225銘柄の株式を買って日経平均株価と同じ動きをするポートフォリオを作ることができ、管理費はゼロ円で済みますね。

もちろん、個人投資家はそこまでは無理だとしても、投資信託を選ぶ際に管理費に気をつけて無駄な費用を払わないようにすることは可能でしょう。同じような内容の投資信託でも、買う商品や買う場所によっては数倍の管理費が発生するのは広く知られています。

このブログの他の記事でも紹介しましたが、ハーバード大学のダニエル・ギルバート教授(心理学)がTEDの講義の中で、「歯磨き粉を買うときに1ドルのクーポンを使う人が、高額のファンドを買うときは0.1%の管理費を気にしない。お金の絶対額で考えていなからだ。歯磨き粉の価格に対する1ドルの割合(たとえば歯磨き粉が5ドルなら20%)と、ファンドの投資額に対する管理費の割合(0.1%)を比較している。このように、比較の対象を間違うと意思決定も同様に間違ってしまう」という趣旨のことを語っています(私が勝手に要約しているので少し間違っているかも)。

しかも、ランニングで発生する費用(管理費)は時間をかけてボディブローのように効くものなので特に注意が必要です。

再起できないほどの深手を負わない

機関投資家は、言葉は適切ではないかもしれませんが、扱っているのは「所詮は他人のお金」です。ファンドマネージャも同様でしょう。

つまり、運用している資産をすべて溶かしてしまっても、せいぜい自分の職を失うだけです。
路頭に迷うことはありません。

しかし、個人投資家は違います。

大きなダメージを負うと、株式市場から退場せざるを得ません。

統計的にいうと稀な確率であっても、たとえば1万回に1回の事象だとしても、その1回を引き当てた個人にしては100%現実のこととなります。個人投資家は、再起不能になるほどのリスクを取るべきではないと思います。

戦略・戦術・戦技

私の拙い考えを書き散らかしてしまいましたが、市場から撤退せずに市場に参加し続けることが「負けない」ことだとすれば、実は個人投資家のリスク許容度はかなり低いという前提に立ち、戦略としては「万一に備えて現金比率を高めておく」「再起できないほどの深手を負わない」ことが重要だと思います(もし個人投資家が現役バリバリの会社員であれば市場から一度撤退しても再参入するということも可能かもしれませんが)。

その上で、戦術としては「個別銘柄の情報に乗せられない」「無駄な費用を払わない」ことに気をつけるべきでしょう。

個々の戦技としては「個人向け国債」「NISA(ニーサ)」「iDeCo(イデコ)」「株主優待制度」などの個人投資家に有利な制度を最大限に活用したり、「小型株」のような戦う場所を選んでみるという感じでしょうか。