投資の対象を「どれだけ買うか?」

資産をどれだけ買うかといっても、「10万円」とか「100万円」とかの絶対額のことではありません。

ご自分が今現在で貯金している中から投資に回そうと思っている金額の割合、あるいは、毎月の給与所得の中から月々の投資に回そうと思っている金額の割合のことを指しています。

ええ、絶対額ではなくて、余裕資金の中から投資に回そうと思っている割合が問題なのです。

毎月の収入がないケース

たとえば、定年退職をして今後は働くつもりがない人がいるとします。

その時点で現金は仮に5,000万円あるとして、毎月入ってくるお金は年金以外になく、その年金も生活費として使うことを想定しましょう。

この5,000万円が残りの人生で使うことができる唯一の現金ということになります。

年金だけでは生活できないので、5,000万円から生活費として2,000万円を取って置くとしましょう。

そうすれば、投資に回せる金額は3,000万円です。

ただし、たとえば株式だと、およそ10年に1回程度の割合で株価が半値に暴落することが起きています。

3,000万円で株式を買った翌日に大暴落して半額になったら1,500万円ですよね。

ここで我慢できる人なら、半額になった1,500万円分の株式を保有し続けるでしょうが、おそらく10人に9人はビビって換金売りでしょう。で、3,000万円から1,500万円に目減りしたことを嘆き、もう二度と株式市場には戻ってこないと思います。

株式市場から完全撤退ですね。リベンジの機会は二度とありません。

これはダメなやつでしょう。

現金保有率を高めてディザスタリカバリをおこなう

そうであれば、最初から3,000万円を投資せず、予備の軍資金として1,000万円を残しておいて、残り2,000万円を投資するのが賢明ではないでしょうか。

もし株価が半分の1,000万円になっても、軍資金の1,000万円で追加購入すれば、株式資産の額は当初の2,000万円まで回復することができます。

このように万一のケースに備えて回復措置を講じておくことを、ディザスタリカバリと呼びます(特にIT業界で広く使われます)。

ディザスタリカバリ

事業継続マネジメントにおける概念のひとつで、災害などによる被害からの回復措置、あるいは被害を最小限に抑えるための予防措置のこと

(Wikipedia)

平たく言えば、転ばぬ先の杖、という感じでしょうか。

株式投資に応用するなら、現金保有比率を高めておいて株式暴落の緊急事態に直面しても被害から回復するための軍資金として流用するということですね。

ただし、どれぐらいが生活費として必要か、また投資の軍資金としてどれぐらいを残して置きたいかは個人差がありますね。特に生活費に関しては年齢や家族構成などによっても大きく異なってきますので。

なので、ここでの数値はあくまで考え方の参考にすぎません。念のため。

毎月の収入があるケース

たとえば、皆さんが現役バリバリの給与所得者だとしましょう。そして、毎月の可処分所得から5万円を投資に振り分けられると仮定します。

この場合、毎月5万円で株式を購入するという選択肢もありますよね。しかも、株式が暴落するまで待つことなく、今日から投資信託の積み立てを始めてもいいのではないでしょうか。

なぜなら、もし今の株価が割高で、明日に株価が暴落して半値になったとしても、その暴落した価格で来月以降5万円の株式を安定的に購入し続けることができるからです。

つまり、現役の給与所得者は継続的に軍資金の補給を期待できるので、一発勝負になる定年退職者とは状況が違うということですね。

ちなみに、この方法は「入金投資法」と名前が付いたりしていますが、別に特別なことをしている訳ではありません。

安全サイドに倒して二刀流でいってみる

少し安全サイドに倒すなら、たとえば毎月の5万円のうち3万円で投資信託の積み立てをおこない、残りの2万円は株式の暴落時にノリシロ(セーフティ・マージン)が十分にあるバーゲン特価で株式を安く買うための軍資金として積み立ててもいいかもしれません。

つまり、コツコツ積み立てる定番の購入方法(入金投資法)と、我慢して暴落時を待つ購入方法をミックスした、いわば二刀流のような感じでしょうか。

入金投資法は積み立て始めた初期に株価が暴落しても十分にリカバリできるという利点があるのですが、逆に、たとえば10年間積み立てた後にバブル崩壊になるとリカバリが難しいのでメリットが無くなります。

それをカバーするのが二刀流ということですね。

もちろん、二刀流だと現金で保有している軍資金にはほとんど利子が付かないというデメリットがあります。

ちなみに、株価が割高だと思えば投資信託の積み立て割合を低くして現金保有率を高め、株価が割安だと思えば投資信託の積み立て割合を高くするという臨機応変な対応も有効でしょう。

結論:株価が暴落しても耐えられるだけの現金を用意しておく

どれだけ買うか — 私の答えは、株価が半分に暴落しても耐えられるだけの現金を軍資金として用意しておきましょう、ということです。

暴落したときこそ絶好の購入のチャンスなのに、指を咥えて傍観するだけなのは辛いですよね。

もっとも、懐に余裕がなければ、気持ちに余裕もなくなり、バーゲン価格でも株式を欲しいとは思わないかもしれません(「羮に懲りて膾を吹く」ってやつですね)。千載一遇のチャンスなのにもったいないことです。