eMAXIS Slim米国株式(S&P500)の実質コストは0.1408%

自分は投資信託を保有していないのですが、最近、「eMAXIS Slim」シリーズの評判をよく耳にします。

「eMAXIS Slim」は、三菱UFJ国際投信さんが運用する投資信託ですよね。

今回は「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」についてコスト面を中心に分析してみました。

米国株式(S&P500)

みなさんご存知のように、S&P500とは、

米国の格付け会社「S&P」が算出している米国の代表的な株価指数。ニューヨーク証券取引所やNASDAQに上場している大型株500銘柄の株価を基準にした時価総額加重平均型の指数

(大和証券)

のことですね。

「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は、有名な「Fund of the Year 2019」では惜しくも「eMAXIS Slim 全世界株式」に次いで2位にとどまりましたが、個人的に米国株が好きで何か分析をするときは代表的な株価指数である S&P500 を使うのでこちらを選んだ次第です。

『投資信託説明書』

資産運用のコストを考える場合、大きく分けると3つのグループに分けられます。

  • 初期費用(購入時)
  • ランニング費用
  • 撤退費用(売却時)

の3つですね。

これに関して、まず、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の『投資信託説明書』(2020年07月23日)を斜め読みしてみました。

初期費用(購入時)

これは最初にワンタイムで一時的に発生する費用を指します。

申込手数料(0円)

申込手数料はゼロです。

いわゆるノーロードというやつですね。

ランニング費用

これは「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」を1年間保有したときにかかる費用のことです。

10年保有すれば10倍だし、数ヶ月であれば日割計算をした費用が発生します。

信託報酬等(年0.0968%以内)

信託報酬は年0.0968%以内(税込)です。 一昔前に比べると桁違いの安さですね。

その他の手数料等(ここでは不明)

『投資信託説明書』には下記の3項目が「その他の手数料等」として記載されています。

  • 信託財産に関する租税、信託事務の処理に要する諸費用、受託会社の立替えた立替金の利息、借入を行う場合の借入金の利息および借入れに関する品借料
  • 信託財産に係る監査費用
  • 信託財産の組入有価証券の売買の際に発生する売買委託手数料等、先物取引・オプション取引等に要する費用および外貨建資産の保管等に要する費用

この3つが「隠れコスト」とか「隠れ費用」とか呼ばれる部分ですよね。

投資家としてはぜひ知りたい費用なのですが、「保有金額または保有期間等により異なるため、あらかじめ合計額等を記載することはできません」とのことで「支払い実績は交付運用報告書に開示」されるようです。

なので、『運用報告書』の部分で後述します。

税金(配当金の20.315%)

日本国内に居住していると日本の課税を逃れることはできません。

配当金(投資信託の場合は正確には「分配金」と呼ばれます)についても、

  • 20.315%(所得税15%・復興特別所得税0.315%・地方税5%)

の税率で源泉徴収がされます。

ただし、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は無配当が続いているので、ランニング費用としての税金は考えなくてもいいと思います。

備考:S&P500の構成銘柄である株式から配当金があった場合には米国内で10%の課税があります。が、これは節税することが難しいので、ここでは無視します。

撤退費用(売却時)

換金(解約)手数料(0円)

換金の手数料はゼロです。

他の投資信託では「信託財産留保額」という名目で解約時に費用が発生するものもあるので、良心的ですよね。

税金(譲渡益の20.315%)

投資信託を売却したときに譲渡益があれば、譲渡所得とみなされて20.315%(所得税15%・復興特別所得税0.315%・地方税5%)が課税されます。

『運用報告書』

先ほどの『投資信託説明書』では「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」で発生する「その他の手数料等」が明示されていませんでしよね。

なので、2020年04月版の『運用報告書』をざくっと読んでみました。

『運用報告書』には費用として以下の4項目があり、『投資信託説明書』と対応しています。

信託報酬(0.119%)
  • (投信会社)0.049%:ファンドの運用・調査、受託会社への運用指図、基準価額の算出、目論見書等の作成等の対価
  • (販売会社)0.049%:交付運用報告書等各種書類の送付、顧客口座の管理、購入後の情報提供等の対価
  • (受託会社)0.022%:ファンドの財産の保管および管理、委託会社からの運用指図の実行等の対価
売買委託手数料(0.012%)
  • (株式)0.008%
  • (投資信託証券)0.000%
  • (先物・オプション)0.003%
有価証券取引税(0.000%)
その他費用(0.032%)
  • (保管費用)0.029%:有価証券等を海外で保管する場合、海外の保管機関に支払われる費用
  • (監査費用)0.003%:ファンドの決算時等に監査法人から監査を受けるための費用
  • (その他)0.000%:信託事務の処理等に要するその他諸費用
備考(対応関係):『投資信託説明書』→『運用報告書』。「信託財産に関する租税、信託事務の処理に要する諸費用、受託会社の立替えた立替金の利息、借入を行う場合の借入金の利息および借入れに関する品借料」→「(その他)0.000%:信託事務の処理等に要するその他諸費用」。「信託財産に係る監査費用」→「(監査費用)0.003%:ファンドの決算時等に監査法人から監査を受けるための費用」。「信託財産の組入有価証券の売買の際に発生する売買委託手数料等」→「(株式)0.008% + (投資信託証券)0.000%」。「先物取引・オプション取引等に要する費用」→「(先物・オプション)0.003%」。「外貨建資産の保管等に要する費用」→「(保管費用)0.029%:有価証券等を海外で保管する場合、海外の保管機関に支払われる費用」。
 

隠れコストを含めた実質コスト

これらを合計すると、

  • 信託報酬(0.119%)+売買委託手数料(0.012%)+有価証券取引税(0.000%)+その他費用(0.032%)=0.163%

なので、2019年度の年間費用は0.163%だった(実績)ことが分かります。

ただし、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の信託報酬は2019年11月12日に「年率0.165%以内 → 年率0.0968%以内」(税込)に値下げされています。

なので、現在進行形の費用を考えるなら、その値下げを反映させる必要があります。

余談:運用報告書の信託報酬が「0.119%」と中途半端なことについては、信託報酬が運用報告書の対象期間(2019年04月26日から2020年04月27日まで)の途中で変更されていることや、消費税が2019年09月に10%へ増税されたこと、および純資産額が500億円を超えたことなどが理由なのではないかと推測します。たとえば実際に変更前の信託報酬「0.165%」と変更後の「0.0968%」を日数で按分すると、(0.165*200+0.0968*168)/368*(366/368)=0.1331(%)となり、実績値の「0.119%」に近くなります(少し適当な計算ですが)。

信託報酬として値下げした「0.0968%」を採用し、その他の費用については前年実績の値を採用すると、

  • 信託報酬(0.0968%)
  • 売買委託手数料(0.012%)
  • 有価証券取引税(0.000%)
  • その他費用(0.032%)

で、計算結果は以下のようになります。

  • 0.0968%+0.012%+0.000%+0.032%=0.1408%

つまり、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の年間実質コストはだいたい「0.1408%」ぐらいだと推測できるわけですね。

いやぁ、一昔前の投資信託に比べると、格段に安いですよね。

ほんと優秀です。脱帽です。