「資産」とは「お金を産む」もの

すでに述べたように、「投資」とは「お金を投じて資産を買う」ことでした。

普段なにげなく「投資」や「資産運用」という言葉を使います。このブログのタイトルにも出てきますね。では、その「投資」や「資産運用」とは、どういう意味なんでしょうか。 読んで字のごとく、「投資」とは「お金を投じて資産を買う」ことを言います...

では、そもそも「資産」とは何のことでしょうか。

資産とは

「資産」という言葉を「資」と「産」の漢字に分けてみると理解しやすくなります。

まず「資」という字ですが、資格・物資・資源・資材などの言葉に使われます。『大辞林』(三省堂)によれば、

①もとで。財貨や財産。
②生まれつき,資質。

という意味ですね。

もともと「資」という漢字の語源は、「資」を分解すると「貝」と「次」になるのですが、「貝」はみなさんご存知のように古代中国では子安貝(こやすがい)が通貨として利用されていたので「お金」のことを指し、「次」は人が2回息を吐いている字なので「人が安堵するぐらいお金がある」とか、「次」は並ぶという意味なので「お金が並んでたくさんある」とか、まぁ、ざくっと言えば「資」とは「たくさんのお金」という感じでしょうか。

そして「産」とはもちろん「産む」という意味ですね。

なので、「資産」とは「お金を産む」ものという意味になります。

具体的な例を見ていきましょう。

資産としての「不動産」

たとえば、土地は代表的な資産ですよね。

更地のままで月極駐車場にすると、毎月、駐車場代が入ってきますね。コインパーキングにすると、たとえば10分ごとに駐車場代が入ってきます。

あるいは、土地の上にアパートを建てると、毎月、家賃が入ってきます。

まさに、不動産(土地)がお金を産んでくれます。

資産としての「株式」

不動産(土地)と並ぶ代表的な資産といえば「株式」ですよね。

改めて説明をする必要もないかと思いますが、株式とは、その株式会社の所有権を分割したものです。たとえば、100株の株式を発行済みの株式会社があるとして、その会社の株式を1株持っていれば、その会社の100分の1のオーナーということになります。

この会社が1年間に100万円の利益を出したとしましょう。そして、この会社の配当性向が100%だとすれば、1株あたり1万円の配当金が出ます。

つまり、株式がお金を産んでくれるのです。

資産としての「債券」

土地や株式に比べるとやや馴染みが薄いかもしれませんが、「債券」もまた代表的な資産です。

債券とは、社会的に一定の信用力のある発行体が資金を調達する際に…発行する有価証券のこと。…おもな発行体には国、地方公共団体、政府関係機関、特殊金融機関、企業(事業会社)などがある。
(Wikipedia)

たとえば、国が発行している債券が国債ですよね。これを個人向けに買い求めやすくしたのが個人向け国債で、たとえば変動10年だと、半年ごとに金利が支払われます。

変動10年の個人向け国債を100万円保有していれば、仮に金利を年1%だとすれば1年で1万円の利子を受け取ることができます。

ここでもまた、債券がお金を産んでくれるんですね。

その他の資産と思われるもの(印税・特許・漁業権)

保有しているだけでお金を産むものとして、著作権・特許・漁業権なども資産に準じると言えるでしょう(漁業権は売買が難しいみたいですが)。

たとえば著名な楽曲の作者だと膨大な額の印税が入ってきますし、小説なども同様です。確か夏目漱石は遺族たちが彼の印税を頼りに生活をしていて著作権切れのときに少し騒ぎになったみたいな話を読んだことがあります(記憶違いならスミマセン)。

特許については、特許を格安に買い漁り、その特許を侵害している企業から莫大な賠償金やライセンス料を巻き上げるパテント・トロールという業者が存在していて、そこへの投資も存在するみたいです。

漁業権についても、知人の親は定置網だか何だかの権利を持っていて漁協から定期的に付届けをもらうと言っていました。また、埋め立てなどで漁ができなくなるので国が漁業権の補償をするという話は新聞などでもときどき見かけます。

いずれも、資産がお金を産んでくれる例ですよね。

「資産」についてもう少し深く考えてみる

国際財務報告基準(IFRS)の定義

さて、会計では「国際財務報告基準」(IFRS)というものが世界的に採用されています。このIFRSが「資産」をどのように定義してるかと言えば、

資産
過去の事象の結果として当該企業が支配し、かつ、将来の経済的便益が当該企業に流入することが期待される資源
(国際財務報告基準/IFRS)

なんですね。

この定義の前半部分は、個人投資家なら、たとえば「自分の持ち物で」と言い換えてもいいでしょう。要するに自分が正当な所有者であることが前提だと言っています。

後半部分は、ざくっと「お金を産むと期待されるもの」と読み換えることができます。

ええ、そうですよね。これって漢字の「資産」(お金を産むもの)とほぼ同じですよね。よく出来ていると思いませんか。

確実に「お金を産む」とは限らず、あくまで「期待値」でしかない

ただし、漢字の「資産」の意味は「お金を産む」ものとなる一方、IFRSの定義をざっくり解釈すると「お金を産むと期待されるもの」でした。

では、この違い、つまり「期待される」とはどういう意味でしょうか。

ええ、これは簡単ですよね。つまり、「期待値」の「期待」と同じ意味です。「例外もあるけど確率的にはそう考えられる」という感じでしょうか。

投資に元本保証はないので、たとえば、こんなケースもときどきありますよね。

  • 資産のつもりで賃貸アパートを建てたが、あてにしていた近くの大学や工場が移転してしまって空室ばかりになって家賃が入らなくなった。
  • 資産のつもりで株式を買ったが、その企業が倒産してしまって配当金がもらえないどころか株式そのものが紙切れになってしまった。
  • 資産のつもりで社債を買ったが、その企業が倒産してしまって利子がもらえないどころか元本までゼロになってしまった。

確かに、個々のケースを見るとこのような例外もありますが、しかし、期待値として(つまり何回も繰り返した後の平均値として)保有していればお金を産んでくれるのが資産です。

時間の経過とともにお金は増える

資産によって得られるお金は、たとえば10年後に初めて「はい、どーんと10万円の収入」となるわけではありません。

たとえば「今100万円で買えば10年後に110万円になる債券」というものがあれば、じっと10年保有して初めて「はい、どーんと10万円の収入」となるのですが、実際には、途中でも市場で換金できます。なので、理論的には「毎年1万円もらっている」ということになります(本来は複利で計算すべきなので金額は異なります。以下同様)。

株式についても、配当金がない会社だと、たとえば100万円で買って10年後に150万円で売れば「10年後にどーんと50万円の収入」のように見えますが、理論的には株価は利益の分だけジリジリ上がっていると考えられるので、「毎年5万円もらっている」ということになります。

つまり、資産は定期的にお金を産んでいて、当然、時間の経過とともにその額は累積されていって増えるんですね。

このように、資産は「時間」を味方にしてくれます。家でゴロゴロしていても、南の島でバカンスを楽しんでいても、資産は24時間365日休むことなくお金を産んでくれます。もちろん、そのお金は資産の所有者であるあなた自身のものになります。働かなくても得られるお金という意味では、不労所得そのものです。

他方、投機については、バクチが代表的な例ですが、投機額に対して期待値はマイナスです。なので、回数を重ねれば重ねるほど、負けがどんどん込んでいきます。つまり、時間が経てば経つほど負ける額も大きくなるので、投機は「時間」を敵に回すことになります(子供の頃に親戚の大人から「バクチとはその場で朽ちること」だと教わりました)。

お金を使うのであれば、消費や投機ではなく、投資をおこない、買った資産をなるべく長く保有したいものですね。